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西日本9原発稼動も電力需給は綱渡り 東西電力融通に周波数の壁


(上の写真は関西電力高浜原発3,4号機。関西電力のSNS公開画像より)


夏の電力不足はいまのところ回避されているが、列島の電力事情は暑い盛りに冬のひっ迫を心配しなればイケない心細さだ。岸田文雄首相はこのほど(14日の記者会見)、今冬の安定的な電力確保のため、最大9基の原発の稼働を進める方針を示した。


9基の原発はすべて周波数50ヘルツの西日本に位置している。電源に余裕のない東日本への送電には設備的に限界があり、「電力の安定供給のため全力をあげる」(岸田首相)と力んだところで、乗り切れるかどうかは微妙なところがある。


岸田首相が述べた9原発は原子力規制委員会の審査を通過し、一度は再稼働した原発だ。電力会社ごとの内訳は下の通り。


関西電力が大飯3号機(稼働中)、大飯4号機、美浜3号機、高浜3号機、高浜4号機の5基。
四国電力が伊方3号機(稼働中)の1基。
九州電力が玄海3号機、川内1号機(稼働中)、川内2号機(稼働中)の3基だ。


この中で、大飯3号機と玄海3号機については、テロ対策施設の完成が稼動の前提になる。大飯3号機は稼働中だが、テロ対策施設の工事のためいったん止めて、12月に再稼働する予定。玄海3号機は同様の事情で来年1月から再稼働する予定だ。


各電力の原発でテロ対策施設の工事について、計画の遅れなどが発生している。(前例がない施設であり、設備や工事の特殊性が遅れの理由と思われる。)


九州電力・玄海4号機は、首相のあげた9基に入っていないが、テロ対策施設の工事のため、9月上旬以降は運転停止とする。運転再開は来年2月下旬の見込みとなっている。


政府・経済産業省は、西日本の原発稼動によって電力に余裕ができる西日本から東日本へ送電して、今冬の電力ひっ迫を乗り切るという目算のようだ。


問題は、福島原発事故以来よく指摘されることだが、(静岡県・富士川~新潟県・糸魚川市を境にして)周波数の異なる西日本から東日本への送電容量に、設備能力面で限界があることだ。


東日本震災後に周波数変換・変電のための設備増強が課題となり、震災時の120万キロワットから、現在は210万キロワットに増強された。(大型原発2基分に近い電力量)


東日本大震災以降、電力不足の東日本(首都圏)にとって、夏冬の西日本からの電力融通は「頼みの綱」だ。だが、冬に列島の日本海側に強力な寒波が襲来した場合、西から東に送る電力量にそれほど余裕が生じないことも考えられる。(太陽光発電が冬には発電量が落ちることも考慮する必要がある。)


電気事業連合会の池辺和弘会長(九州電力社長)は15日の記者会見で、冬の電力確保に向けて「原発を最大9基稼働させる」との岸田発言について、「ほとんどの原発は供給計画に織り込んでいて、需給が厳しい状況に変わりない」と述べている。


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日本の東西で電気の周波数が違うのは、明治時代に東京では「ドイツ製」の周波数50ヘルツの発電機が、大阪には「アメリカ製」の周波数60ヘルツの発電機が輸入され、ついには富士川と糸魚川のラインで分かれるということになった、というのが定説だ。


戦時体制で日本の発送電会社は日本発送電に統合された。戦後すぐの時代に、東西周波数をどちらかに同じにしようという案もあったが、いわゆる九電力体制ができあがって、周波数の統合も沙汰止みになった。


昔は工場(たとえば紡績工場など)は動力として交流モーターを使うのがふつうで、電気の周波数を変えると工場のモーターをすべて交換しなければならない。それが大きな障害だったとされる。

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