中国がゼロコロナに固執する3つの理由 抗議行動は全国に拡大
新型コロナウイルスの感染対策として、「ゼロコロナ」政策を続ける中国の首都北京や上海などで、きびしい行動制限に対する大規模な抗議活動が起きている。デモが規制されている中国で、こうした抗議活動が起きることじたいが、異例の事態といえる。
日本や欧米がウィズコロナに方針を切り替える中、なぜ、中国政府は「ゼロコロナ」に固執するのか。その背景には、中国製コロナワクチンの有効性への疑問や、医療態勢の問題がありそうだ。
26日、27日に大規模な抗議活動が、首都北京市、最大の経済都市上海市で起きた。これより前、広東省の省都で製造業が集積する広州市で、工場閉鎖に抗議する労働者が防護服を着た当局者(公安関係者)と激しくもみ合う映像が流れた。
成都や武漢、新疆ウイグル自治区でも、都市封鎖に対する大規模な抗議活動が起きたと言われている。
中国がゼロコロナ政策を継続している理由について、様々な見方がある。野村総研が7月に出したレポートは、ゼロコロナ政策を続けざるを得ない理由について、
① 高齢者のワクチン接種率が比較的低い
② 中国製の新型コロナワクチンの有効性がやや低い
③ 集中治療室(ICU)の病床が十分でなく、人口当たりの医師数は足りているが、看護士が少ない――ことから、感染が拡大し重症者が急増した場合に、いわゆる医療崩壊が起きるおそれがある、と3つの理由を挙げている。
なぜ中国はゼロコロナ政策を止めないのか |2022年 | データの見方・使い方 | 野村総合研究所(NRI)
同レポートが引用する米中の共同研究によると、ゼロコロナを解除した場合、半年以内に160万人の死者が出るおそれがあるとしているという。
中国政府も高齢者のワクチン接種率が低いことの危険性を承知しているようだ。ブルームバーグ通信(29日、電子版)は、中国・国家衛生健康委員会は80歳以上の高齢者へのワクチン接種を強化すると表明したと伝えている。
同通信によると、中国では人口14億人のうち、9割余りが2回のワクチン接種を済ませている。全体的な接種率は世界的にも高水準だが、高齢者の接種率は低めで、国家衛生健康委によると、80歳以上の65.8%しか接種を完了していない。(60歳以上は86.42%。)
中国は、国産の新型コロナワクチンを開発した。従来の技術でつくられた不活化ワクチンとよばれるもので、欧米で開発され日本でも使われているmRNAワクチンに比べると、有効性が低いと言われている。(オミクロン株に対して免疫力が低いとも言われている)
首都 北京であった、大規模な抗議活動に集まった人たちは「自由がほしい」などと大きな声で訴え、言論が封じられていることに抗議の意思を示して、白い紙を掲げた。
抗議活動は、「ゼロコロナ」政策の背後にある習近平主席の強権体質に向かっているようにもみえる。習近平政権の対応が注目される。
