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黒田総裁 4%インフレを「手柄」に去る 植田日銀に残した3つの課題

YOU TUBE 日テレニュースより 退任の会見をする黒田東彦日銀総裁
【歴代最長10年】日銀・黒田総裁が退任会見 - YouTube


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7日に日銀総裁を退任した、黒田東彦氏は年間インフレ率が4%になったことを、「デフレ脱却」と言い換えて、異次元の金融緩和の「成果」として挙げた。(と筆者にはみえる)


40年ぶりの高インフレは、知っての通り、燃料や食料の国際価格上昇と、超低金利の副作用である為替の円安がもたらした。7日に発表された2月の実質賃金は、インフレによる目減りで、前年比2.6%の減となった。


黒田総裁は以前は、超低金利を続けて民間経済が下支えし、賃金が上がり、物価もあがるという「好循環」を実現させると言っていたが、ついにそれは実現しなかった。


さて、8日に総裁に就任した植田和男氏は「当面、金融緩和を継続する」と国会などで繰り返し述べている。


米国で、いわゆるテック企業の預金を受け入れてきた中堅銀行・「シリコンバレー銀行」が突然に経営破綻、欧州では世界大手の一角、クレディスイス銀行が経営悪化観測から資金流出に見舞われ、やはりスイス大手のUBS銀行による救済合併となった。


足もとでは「金融不安」は収束しつつあるようにみえるが、米国の債務上限引き上げ問題もあり、日銀は当分の間、「いまの金融緩和の維持」を言い続けるだろう。


日銀の金融政策が、いつ正常化に向かうかは置いておくとして、正常化するべきことを3点にわけて、整理してみた。


① 日銀は金融政策の目標を長期金利(10年物国債利回り)をゼロ近傍にすることに置き、プラスマイナス0.5%の幅を持たせている。これを、日本銀行が本来誘導目標としてきた短期金利(いまはマイナス0.1%に固定)の操作に戻すことはあるか。


② ①のイールド・カーブコントロールで、マイナスを許容する「超低金利」をつくりだすため、日本銀行は国債を高値(ほとんどゼロ金利で買い入れ、昨年末で発行残高1060兆円の半分以上、560兆円を保有するにいたった。国債の含み損は昨年12月末の時点で約8兆8000億円に上っている。
日銀は国債を時価評価せず、償還まで保有し続けるため、日銀の損益には影響ないと言っている。一方で、先進国中央銀行が、含み損を抱えた前例はない。日銀は事実上の「財政ファイナンス」をいつまで、どこまで続けられるか。


③ 日本銀行は株価下支えのため株式ETF(上場投資信託)を買い入れ、2022年3月末時点で51.3兆円となっている。買い入れ額の累計(簿価)36.6兆円との差額14.7兆円は含み益だ。含み益が出ているからいいようなものの、社会主義国でもあるまいし、中央銀行が大株主という異様な状況は企業ガバナンス的にも問題がある。解消のメドはあるか。


異次元の金融緩和は、安倍晋三元首相が主唱するアベノミクスの大きな柱として始まった。超低金利政策は民間活力を強める=円高で海外に流出していた製造業の立て直し、新しいITやバイオ産業の創出にあった。


しかし、ITはグーグルやアマゾン、アップルなど米国巨大企業に太刀打ちできず、液晶パネルや半導体はばく大な公的資金を投入したにもかかわらず劣勢を挽回できなかった。


安倍氏は首相を退任してからは、経済の成長戦略よりはむしろ、安全保障=軍事防衛費の増大に注力した。防衛費のGDP対比2%を主張し、そのために、国債を発行しても、「日銀が借り換えすれば問題はない」とまで言った。


岸田文雄首相は、安倍氏の念願だった防衛費大幅増額を実現させ、いまは、異次元の少子化対策に力を入れいてる。財源はどこにあるのか。


岸田首相は、国会で、日本銀行の新執行部がアベノミクスの路線を継承すべきかどうか問われ、「マーケットの状況等を判断し、日銀として適切な手法をとっていくことになると考えている」と語った。


日銀を政府の財布がわりに考えていた安倍首相よりはましだが、財政規律に触れていない点で、なお、当事者意識がなさすぎるというべきだろう。

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