MUFGには「処分」なしも三毛会長の進退に注目 顧客の意に反し傘下銀行・証券で情報共有 ファイアウォールは有名無実か
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三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社 会社説明【三菱UFJフィナンシャル・グループ公式】 - YouTube
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大銀行が取引先の顧客企業の株式上場や増資計画を知り、グループの証券会社を幹事会社にするよう働きかけるーー金融庁は24日、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)傘下の三菱UFJ銀行と、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、モルガン・スタンレーMUFG証券の3社について、冒頭のような金融持ち株会社傘下の銀行と証券間で、情報の共有を制限する「ファイアウォール規制」違反があったとして、金融証券取引法に基づく、業務改善計画の提出を命じた。
銀行は取引先の企業について多くの「社外秘」的な情報を持っている。株式上場計画もそのひとつだ。それを知った銀行が、顧客に対して系列の証券会社を「株式引受」の幹事会社にするよう顧客に求めることは禁じられている。
特別な融資条件と抱合せにすることは優越的な地位の濫用(らんよう)にあたり独禁法違反になる可能性もある。三菱UFJ銀行の違反事例では、株式の公募増資の際に系列証券の引き受け割合を高くしなければ融資期間を短くすると顧客に伝えた事例があった。
https://digital.asahi.com/articles/DA3S15966432.html(6月25日朝日新聞)
これは優越的地位の濫用そのものではないか。
金融庁の処分で理解に苦しむのは、三菱UFJ銀行と2証券会社を統括する立場の金融持ち株会社「MUFG」について、銀行法に基づく「報告徴求命令」ですましたことだ。
MUFGには、銀行と証券子会社の間のファイア・ウオールが機能していることに常に気を配る責任があるはずだ。上記朝日新聞記事によると、違反事例があったときの三菱UFJ頭取、三毛兼承氏は不適切な情報共有について認識していながら対策を講じなかった、とされる。
三毛氏は現在、持株会社MUFG会長を務めている。MUFJ、三菱UFJ銀行と2証券会社がしかるべき報告、是正計画を出した時点で、三毛氏は責任をとって辞任するのが妥当だと思われる。
金融の規制緩和の一環として、銀行の証券業参入について、証券子会社を使う形で認めたのは1993年のことだ。当時、野村証券を筆頭とする証券大手(大和証券、日興証券、山一証券)が強く反対した。
4大証券は株式上場や増資の際の引受業務(アンダーライティング)主幹事をほぼ独占していた。親銀行の資金力(情報力)を背景に銀行証券子会社が入ってきて、引き受け業務が侵食されるのをおそれたからだ。
(引受主幹事会社は手数料が高いが、一時的に自分で最大シェアの株を買い取るので、資金力と販売力が必要になる。万が一、株が売れ残ったら自分で買い取るリスクもある。)
バブル崩壊で四大証券の一角の山一証券は自主廃業に追い込まれた。4大証券で独立系で残るのは野村証券と大和証券の2社となり、日興証券は曲折をへて、三井住友銀行の傘下に入りSMBC日興証券となった。銀行系証券子会社や外資系証券(投資銀行)が引受やM&Aに進出し、独立系証券会社の発言力が低下していった。
SMBC日興証券も22年に株価操作事件を起こしたが、親会社の三井住友フィナンシャルグループのファイアウォール規制違反は報告徴収命令にとどまった。
銀行側からは規制のさらなる緩和を望む声が上がっている。そうなれば、今、問題になっている事例も将来はお咎めなしになるかもしれない。金融庁が金融持ち株会社を処分しないのは、違反を軽微なものと考えている可能性がある。それが本当に顧客の利益になるかどうか、金融庁は考えるべきだ。
