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「コメ業界」政府備蓄の放出を望まず 放出すれば24年産米価格は下落 JA新米仮払い30%~40%高

農水省の資料より、基本的な政府備蓄米の運用。毎年21万トンを買い入れ、備蓄米を売却するような事態が起きなければ、もっとも古い5年持ち越し米を飼料用や加工用に売却する。最近は、一定量を子ども食堂や学校給食に無償または有償で提供している。
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コメの品薄が続き、政府備蓄米の売却(放出)を望む声があるが、坂本哲志農水相は①今年産米の収穫、流通が始まった、②民間流通を基本としているコメの需給や価格に影響与える恐れがあることを理由に、備蓄米放出に否定的な考えを示している。


① 、②ともに、もっともに聞こえるが、実のところ、①と②は密接に関係している。コメ業界ーーコメの生産者から、その集荷、流通をになう農協(JA)組織、民間卸、販売業者にいたるまで、コメにかかわる大多数ーーは、備蓄米の売却で需給が緩み、収穫が始まったばかりの24年産米の価格が下がることを望んでいないだろう。


むしろ、コメ価格が高止まりすることを期待しているとみていい。


そのひとつの表れが、農協(JA)がこれから買い入れる24年産米について、生産者に支払う概算金(仮払金)だ。30%から40%と大幅に引き上げる動きが各地で出ている。


たとえば、コメどころの秋田県では、JA全農あきたが24年産米の「あきたこまち」1等60キロに支払う概算金を前年比4,700円アップの1万6,800円に決めた。実に39%の引き上げである。(秋田さきがけニュース電子版による)
こまち概算金1万6800円 24年産、前年比4700円増|秋田魁新報電子版


新潟のJAや北海道のホクレンでも、銘柄米のコシヒカリやななつぼしの概算金を大幅に引き上げた。農協は農水省の監督下にあり、概算金の引き上げは農水省が承知のうえのことである。


コメの流通は複雑で、卸売業者がコメ生産者から直接買い付けることもある。その買付価格も、JAとの競争上、上がるだろう。生産者から消費者への直販もあるが、それもたぶん上がる。


そこで、農水省が政府備蓄米の売却(入札を実施)すると、どうなるか。備蓄米は過去5年間のコメが約20万トンずつ、計約100万トンある。(通常は、5年前の古米は加工用米や飼料米として売却され、当年産米と入れ替わる。)


備蓄米は、新しくても23年産米なので、売るとなれば24年産米より安い値がつくことは必定で、新米価格の足を引っ張ることになる。


概算金で今年はコメ価格が30~40%程度、高くなることを見込んでいるのに、備蓄米を放出すると市場を急冷させるだろう。もし、最終的に、概算金を下回った価格でしか売れないと、JAは差額を生産者から回収することになる。そんなことはとてもできない話だ。


後出しになるが、備蓄米制度を導入した時に、市場価格への影響を避けるために、備蓄米の放出(売却)は、出来秋(収穫期)を避けることになっている。


いうまでもないが、コメ価格が下がるのは、消費者にとってはいいことだが、コメ生産者、コメ流通に携わる業者(JAと民間卸業者)にとっては好ましくないことなのだ。


さて、コメ在庫に話を戻すと、昨年6月末の時点で、民間のコメ在庫は197万トンあった。民間の適正在庫は200万トンとみられているが、これが今年6月末には156万トンと40万トン減っている。(それでも政府備蓄米より多い)


最近、コメ不足の要因として指摘されているインバウンド(訪日観光客)需要の増加は5万トン程度と推計される。ざっと30万トン程度が国内の需要増となる計算だが、急に日本国民のコメを食べる量が増えたとは考えにくい。おそらく、農水省は、家庭の買いだめ分が20万トン程度あるとみているのだろう。


今年のコメ不足は、1993年=平成5年のコメ不足に並ぶ、令和の「コメ騒動」と言う人もいるが、当時を知る筆者からすると、大げさにすぎる。1993年は記録的な冷夏で、コメが大不作(作況指数74)となり、200万トンを超すコメを緊急輸入したのである。
昨年23年産米の作況は平年並みの100で、民間と政府の在庫を合わせればまだ計250万トンある。


テレビ(一部新聞も)は盛んに「令和のコメ不足」などと煽っているが、それは消費者の買い急ぎ、買いだめを招き、コメの値上がりで、じぶんの首を締めることになるのを知るべきである。


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備蓄米の売却・放出の手続きは時間がかかる。まず、農水省はコメの需給状況を緊急に調査する。その後、専門の部会を開いて、放出の可否を農水相に諮問し、農水相が決める。売却は入札方式で行う。


仮に、いまからとりかかっても2、3か月はかかるだろう。政権の交代が迫っているいまは、その判断はしない、できないと筆者はみる。


吉村洋文大阪府知事はもう少し早く、6月ごろに備蓄米売却を言うべきだった。新米が出回る時期では遅い。大阪府はあまりコメがとれず、ほぼ純消費地である。その弱みが大阪のコメ不足に出ている。


政府備蓄は、基本的にはコメが不作になったときの備えだが、2011年の東日本大震災のあと、福島県などで作付が減って11年産米の流通量が減ったため、翌12年に、備蓄米4万トンを供給したことがある。


いまは、備蓄米を学校給食に使ったり、「子ども食堂」などへ無償(むしょう)で提供したりしている。

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