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コメ価格上昇続く 行き過ぎた 政府と農協の「高値誘導」 概算金引き上げが呼び水に

9月から急騰したコメの相対取引価格。農水省の資料より。
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農協組織の機関紙「農業協同組合新聞」電子版に長野県の松本ハイランド農協組合長が、コメの需給ひっ迫と価格上昇について書いているが、その中で「食糧管理制度の時代と異なり、そもそも米は自由市場だ。」と語っている。
【2024年を振り返る】揺れた国の基 食と農を憂う(2)あってはならぬ 米騒動 JA松本ハイランド組合長 田中均氏|JAcom 農業協同組合新聞


この組合長は「農協が売り惜しんでいるわけではない。」ということを言いたいようだが、そもそも「コメは自由市場だ」というところに、大きな間違いがあるのでそれを指摘しておきたい。


まず「コメは自由市場だ」だが、外国産米の輸入は貿易協定によって上限を年間80万トンにしている。日本のコメの生産量は700万トン程度なので、10%強にあたる。輸入先は米国や豪州、タイだが主食に回るのは10万トン程度で、あとは加工用途(米菓、泡盛用)または海外支援に回る。


海外のコメは産地・品種にもよるが日本のコメより格段に安い。(20~40%程度)輸入量を増やすと、日本のコメ価格を下げて日本の小規模コメ農家は困窮するだろう。コメ農家を生かさぬよう殺さぬよう票田としてきた自民党にとって、主食用のコメ輸入を増やすのは
到底できる話ではない。


第2の食糧管理制度について、8月に話題となった政府備蓄米の放出(放出といってもタダではない)の関連で説明する。


政府備蓄米は、年間コメ生産量(約700万トン)の約15%、合計100万トン程度ある。毎年20万トンずつ入れ替えで、5年たった古い米は加工用に回される。
これもコメ市場とは切り離して、コメ価格に影響を与えないようにするためだ。


21日の本ブログにも書いたことだが、コメの集荷、流通市場は、JA・農協グループが4~5割近くを握っており、価格決定に大きな力を持つ。


加えて、農協がコメを出荷予約する農家に対して、事前に「概算金」と呼ばれる予約金を支払うからだ。農家のコメ出荷が本格化する前、9月から都道府県農協ごとに決まるが、今年産米の概算金は23年産米に比べて、30~40%程度引き上げられた。


思い出すべきは、8月下旬に当時農相の坂本哲志氏は「政府米を放出すれば価格に影響を与える」と語っていたことだ。いうまでもなく、価格が下がって、せっかくの概算金がムダ玉になることを恐れたのである。
(コメ価格が下がったら概算金との差額を返してもらわなければならない。そんなことをした前例はない)


冒頭に紹介した農協組合長は「政府米備蓄の放出」を最初に言った大阪府知事の吉村博文氏を「新自由主義を唱えるどこかの知事」と批判しているが、「自由」の使い分けに無頓着すぎるというべきだろう。


吉村氏に知恵をつけたのはだれかは知らないが、使えない「政府備蓄米」を世に知らしめようとした誰かかもしれない。

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