時代遅れの新聞読みブログ

前期高齢者が新聞(紙、電子)・ネットのニュースをフォローします。

コメ農家「時給10円」がホントならトラクターデモはできない 間違いの元は朝日新聞記事 所得と混同

深浦サブロー

上は平均的コメ農家(法人経営を含む)の10アールあたり生産費用のうちわけ。労働費を10アールあたり労働時間で割ると、「時給」にして約1,500円になる。
++++++
3月末にトラクターを連ねた「令和の百姓一揆」を訴える人たちが「コメ農家の時給は10円」と訴え、「農業守ろう」と訴えたことが新聞やネットで取り上げられた。


筆者が不思議に思うのは、もし、「時給10円」が本当なら、遠くは山形県から出てきた人(主催者の一人)が東京に出てくるのも難しいのではないかということだ。(この方は少なくとも時給10円ではないだろう。)


「時給10円」の大元になったのは、9月9日付け朝日新聞記事「コメ農家の所得はわずか年1万円 米不足の裏で統計が示す生産地の苦境」(見出し)だと思われる。


以下、この記事を引用する。「農林水産省が発表している農業経営の統計(営農類型別経営統計)によると、主に水田で耕作している農家の農業所得の平均は、21、22年(令和3年、4年)と2年続けて1万円となった。」と書いている。


ここまでのデータ(数字)の引用じたいは正しい。この先の記述が問題で、記者は「ちなみに農業に費やした労働時間の平均は1,000時間ほどで、『時給』に換算すると10円になってしまう。」と書く。


多くの方は時給10円のナゾがわかったと思うが、「所得」(ざっくりいえばコメ農家の総収入から「労賃」を含めた諸経費を差し引いた額になる)を、労働時間を1,000時間として割って、「時給10円」をはじき出したのである。(この1,000時間という労働時間もあやしい。コメ農家の耕作面積平均2.8ヘクタールならば、労働時間は600時間ほどになる。


読者を驚かせる「時給10円」を作り出すために、労働時間を水増ししたのだろう。


さて、それでは本当の平均的なコメ農家の「時給」はいくらだろうか。


上の図=農林水産統計「令和5年産 米生産費」によると、コメ生産費(10アールあたり)の内訳で「労働費」として3万4,400円が計上されている。同じ統計によると、10アール当たりの労働時間は21.8時間で、時給にすると、1,577円となる。

(所得1万円の令和4年産米で同様の計算をすると1,549円だ)


個人経営の農家の場合、本人の労賃が「確定」するのは、コメを売った収入から、燃料費や肥料代、農薬費、農機具の減価償却費など労賃以外の諸経費を差し引き、いくら残っているか、ということになる。


ふたつの統計からいえるのは、平均してコメ農家は収支トントン(労賃も出して、平均して所得は1万円)ということになる。(ただし、平均の話なので、小規模な5割程度が赤字ということもありうる。)


小規模コメ農家の多くは兼業農家で、兼業先の給与が農業所得より大きいということがある。農業所得が赤字ならば、兼業先の給与から天引きされた所得税、住民税が確定申告により戻って来る。


農家の高齢化がすすみ、年金を受けている人も多い。コメ農家の平均年齢は70歳程度だ。農家はふつう国民年金や農業者年金に加入しており、その額が十分かどうかは別にして年金を受給しているはずだ。


自治体や農協、会社に務めていた兼業農家は、厚生年金からしかるべき年金を受給しているだろう。赤字になるのなら大規模農家に耕作を委託して、しかるべき委託料をもらった方が確実に収入になり、赤字の悩みは消えるはずだ。


トラクターデモの主催した山形の方は、コメ作りのほかに養鶏を営んでいて、多角化経営に取り組んでいるようだ。有機栽培のコメを消費者に直売するなどの活動をしているようだ。


いまのコメ農家は小規模農家と大規模農家(個人、法人経営)に分かれている。コメは耕作面積が大きいほど、経営効率があがり5~6ヘクタール以上の中、大規模農家は黒字経営になっている。


トラクターでデモをする方々は小規模農家に成り代わって「時給10円」を訴えているのだろうが、取材者は、ホントに時給10円なら、東京にトラクターを運びいれることもできないことに気づく必要がある。


++++++

9月9日の朝日新聞記事で、記者は「米作りには、個人が営む零細な農業から、法人で取り組む大規模な営農まであり、経営状況は一律にはまとめられない。とはいえ、20年の農業所得の平均は17万9千円だった。そこから突然大幅に減少し、わずか1万円になってしまったことに驚かざるをえない」と書いている。


「所得」から時給を算定するメチャクチャなことをやっているので、今さら詮なきことだが、所得17万9,000円にしても労働時間1,000時間なら時給179円である。少し考えれば所得から労賃を計算する間違いに気がついたと思われるが、残念なことである。


2024年の所得は米価上昇のおかげで、かなり上がったのは間違いない。






























見出しと記事にある「時給10円」はどこからきたのか。記事には「現在の生産コストは

×

非ログインユーザーとして返信する