低い食料自給率はトウモロコシ全量輸入が一因 むなしい「有事にコメ増産」議論
上の穀物生産量、輸入量のデータは、2022年から2024年のものを使った。トウモロコシが自給率の観点から問題にならないのは、国内生産を増やそうにも今さら無理なことが大きいと思われる。
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有事に備えてコメ(または小麦)の増産をはかるべきだという声が、国会などで議論され、JA(農協)関係者からも出ている。食料ナントカ対策法案まで成立した。筆者の独断だが、ナントカ法案を含めて、一連の議論は、食料としてなじみの薄いトウモロコシが、消費量、輸入量とも日本最大ということを忘れているといわざるをえない。
トウモロコシの輸入量は年間1,500万トンに上り、これはコメと小麦をあわせた消費量よりも多い。日本の食料自給率はカロリーベースで38%であることは知られているが、トウモロコシを含めた穀物自給率になると27%程度に落ちてしまう。
1,500万トンのうちざっと1,200万トン程度は家畜(ウシ、ブタ、ニワトリ)の飼料に回る。あとはコーンスターチ、食用油に使われる。
すべてが、ヒトの胃袋に収まるわけではないが、食肉や鶏卵のカロリー自給率を出す場合、農水省は輸入飼料(トウモロコシが多い)の分を差し引いて調整する。その結果、国内で生まれて、飼育されたとしても食肉(鶏卵)の自給率は低くなるのだ。
以前は、トウモロコシの輸入元は米国がほとんどを占めたが、2023年にはブラジル産が急増して44.7%となり、1位の米国産45.3%と肩を並べている。(米国で干ばつの影響があった一方、ブラジルは好天に恵まれた。)
日本でトウモロコシというと、北海道の名物「スイートコーン」を思い浮かべるが、こちらは、農水省の統計では、穀物でなくて野菜に分類される。生産量は23年で約20万トン程度だ。家畜に与えるには量が到底、足りないし、高すぎる。
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農水省は、飼料用穀物の自給率を少しでも上げるため、コメの転作作物として、実だけでなく茎も葉も飼料に使う「デントコーン」の栽培をすすめている。転作作物なので、コメの生産とはトレードオフの関係があること、コメとの差額は補助金で補てん(納税者の負担)されることに注意するべきだ。
府・農水省は、飼料用穀物の自給率を上げるため、コメの転作作物として、実だけでなく茎も葉も飼料用に使う「デントコーン」の栽培をすすめている。コメの転作を黄熟期に収穫して、稲WCS同様、茎、葉、実のすべてをサイレージとして調製し、乳用牛の飼料として利用します。
