参院選各党 食料自給率向上を主張も 輸入トウモロコシ1500万㌧は見て見ぬふり JA全農が最大の需要家
図に示すコメは主食用で、コメ加工品や飼料用の回るコメは除く。輸入の10万トンはミニマムアクセス米88万トンの内数。
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日本でもっとも大量に消費されている穀物は、コメ(年間700万トン)でも、小麦(年間600万トン)でもなく、年間1,500万トンを消費するトウモロコシである。
膨大な量のトウモロコシは、ほぼ全量を米国とブラジルからの輸入に頼っており、その量はコメ、コムギ、大豆をあわせた量にほぼ匹敵するか、上回っている。
参院選ではおりからの米価高騰で、与野党とも食料自給率向上、とくにコメの生産増強を訴えている。しかし、はっきりいって、コメを20万トンや30万トン増産したところで、焼け石に水で、いまの日本のカロリーベースの自給率(38%)はぴくりとも動かないだろう。
そんなにトウモロコシを食べている覚えはないという人も多いだろうが、それもそのはず、輸入トウモロコシの8割、ざっと1,200万トンは家畜(ウシ、ブタ、ニワトリ)の飼料(エサ)に回っている。(人が食べるのは残り2割で、食用油やコーンスターチとして、胃袋におさまる。)
飼料用トウモロコシは「ゼロ%関税」が適用されている。関税をかければ、最後は畜産農家の負担増になり、食肉や鶏卵の生産コストがあがり、消費者の負担となるからだ。
ひとつ指摘しておきたいのは、飼料用トウモロコシの大きな輸入業者は、農協系のJA全農であることだ。農協はことあるごとに食料自給率の低さを訴え、「コメだけは自給を」というが、飼料用トウモロコシを全量輸入に頼っていることは、知って知らぬふりを決め込んでいるのだ。
自民党農水族はむろんのこと、輸入トウモロコシが食料自給率を下げていることは知っている。それを国会などで持ち出さないのは、国内で1,500万トンもつくることは到底ムリと知っているからだ。(農地がいくらあっても足りない)
中でも参政党はコムギや大豆の備蓄を増やすことを訴えている。コムギの国内産地は北海道だが、コメの転作としてコムギがつくられており、コメとコムギの作付けはトレードオフの関係にある。
大豆の場合、国産は5%に満たない。ほとんどを輸入に頼っているものをどうやって備蓄するのか。あまりにも実態を知らなさすぎると言わざるをえない。
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日本でトウモロコシというと、北海道の名物「スイートコーン」を思い浮かべるが、こちらは、農水省の統計では、穀物でなくて野菜に分類される。生産量は23年で約20万トン程度だ。家畜に与えるには量が到底、足りないし、価格が高すぎる。
以前は、トウモロコシの輸入元は米国がほとんどを占めたが、2023年にはブラジル産が急増して44.7%となり、1位の米国産45.3%と肩を並べている。米国で干ばつの影響があった一方、ブラジルは好天に恵まれた。