脱2酸化炭素と脱原発は二択か?衆院選各党政策にみる
脱二酸化炭素と脱原発は2択か? 衆院選各政党政策を比べる
【自民党】
2050年にニュートラルカーボンを実現するめに、原子力発電所は持続的に活用する。原子力規制委員会に認められた原子力発電所は立地自治体の理解と協力のもと再稼働を進め必要規模を活用としていく。
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いまの自民党政権の政策に添ったものだ。気になるのは公約として「高レベル放射性廃棄物がでない核融合の開発を推進し、安定電源の柱として実用化を目指す、とある点だ。核融合炉は研究段階で、文科省のサイトをみても「2050年ごろに実用化のメド」とある。最終目標の核融合にいたる中段の核エネルギーだった高速増殖炉は破綻してしまった。福島の廃炉費用や、遅れに遅れている使用済み核燃料処理施設に巨額のおカネが使われている。核融合研究に投じるカネがあるのだろうか。
【公明党】
「原発の新増設は認めない。将来的に原発ゼロを目ざす」とある。
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「将来ゼロ」が自民党との違いと言えば違い。エネルギー、原発政策は自民におまかせか?
【立憲民主党】
原発の新増設は認めない。国の責任のもと廃炉をすすめる。再生エネルギーによる発電割合を2030年50%、2050年100%をめざす。
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いまの再エネルギー電力の割合は20%強である。あと10年足らずで倍に増やせるかどうか。(政府目標の46%も同様)立憲は「2050年までのできるだけ早い時期に原子力に依存しないカーボンニュートラルをめざす」としている、見方をかえれば再生エネルギーの拡大が進まなければ原発依存せざるを得ないと考えているのか。
【共産党】
2030年度までに電力消費を20~30%削減し、石炭火力、原発の発電をゼロにし電力の50%を再生可能エネルギーでまかなう。
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国内の電力消費は産業37%業務(サービス産業など)34%家庭28%となっている。(2018年度エネルギー白書より)各分野で20%減らすと、企業活動は停滞低迷し、国民生活も困窮するのではないか。
【維新】
既設原発は市場原理の下でフェードアウト(退出)を目ざす。小型高速炉など次世代原子炉の研究を強化、継続。
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市場原理主義=新自由主義の維新らしい方針。廃炉費用や使用済み核燃料の処理費を考えるとコスト高の原発はフェードアウト(退出)を余儀なくされる可能性がある。失敗に終わった高速増殖炉「もんじゅ」は高速炉の一種である。違うタイプの高速炉を研究、開発するにしても核融合と同様に「廃炉処理で手一杯なのにどこにそんなカネがあるか」という話になるのではないか。
【国民民主党】
原子力は電力供給の基盤の重要な選択肢であり、①40年運転制限の厳格適用②避難計画の作成と地元同意を得た発電所は稼働③新増設はおこなわない。
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国民民主党は立憲民主党とともに、「連合」を支持基盤とするが、連合傘下で電力会社
やその関連会社からなる電力総連(21万人)の出身議員は国民民主党に所属する。そうした事情を反映したとみられる。原発についての方針は立憲よりは自民に近い。
蛇足:環境保護運動家のグレタ・トウエンベリさんの母国のスエーデンの電源構成は2016年で国内発電電力量(1,560億キロワット時)のうち、水力が40%、原子力が40%、風力10%、バイオマス・廃棄物発電7%で、天然ガスなど化石燃料による発電比率は1%と少ない。脱カーボンという点では胸を張れるが、原子力依存度は欧州の中でも高い。トエンベリさんを賞賛し、脱カーボンを上から目線で説くマスコミは、エネルギー政策には各国個別の背景があるということも伝えるべきではないか。
