どうみてもムリ 参政党 食料自給率100%目標 超現実の公約は農家票を取れるかか
読売新聞、朝日新聞の参院選挙情勢調査では、参政党が議席を伸ばしそうだ。参政党は他政党と同様にコメの増産や食料自給力向上に力点を置くが、筆者が同党の公約をみるかぎり、あまりに農業の現実を知らなさ過ぎるようにみえる。
都市部ではともかく、農家票のある地方の1人区では苦戦するか、相手にされないのではないだろうか。もし、地方区で自民党や立憲、国民の候補を破って議席を獲得したら驚きである。
参政党は同党の公約として、10年以内に38%の食料自給率を、10兆円の規模の予算をかけて、10年以内に自給率を倍増させ、2050年には100%を達成を目指す、と主張している。
上の表は当ブログでも何回か取り上げている主な穀物の国内生産量と輸入量の図である。
まず自給率向上の障壁になるのは、1300万トンを輸入するトウモロコシである。休耕田などを活用するにしても、農地が足りないのは小学生でもわかりそうなことである。(それに、参政党は休耕田を復活させてコメをつくると言っている。トウモロコシの生産余地はない)
トウモロコシは主に家畜の飼料に使われる。参政党は「我が党が目指すのは人の食べるコメや小麦、大豆などの自給です」と言い出すかもしれない。
日本の農地は限られており、小麦や大豆は余剰気味だったコメの転作作物としてつくられてきた経緯がある。
とくに消費量で米と匹敵する小麦は、国内最大産地の北海道で、コメの転作作物として奨励、増産されてきた。つまり、小麦とコメの生産はトレードオフの関係にあり、どちらも増産するとはいかないのだ。
参政党は、「食料自給率が低い状態では有事による海上通路(シーレーン)封鎖があれば、国民の半数状態が飢餓状態に陥るという試算もある。」と脅しているが、有事になれば食料だけでなく、石油や天然ガスといったエネルギーが入ってこなくなる可能性がある。
そうなれば、農機具も乾燥機も農産物輸送にも、支障が出るし、農業だけでなく一般生活も大変なことになるだろう。
もうひとつ付け加えると、参政党はほぼ全量輸入の化学肥料原料は順次有機に切り替え、2050年自給率を25%にする、と言っている。さすがに100%は無理だと思ったのだろう。それなら、食料自給率100%も無理ということはわかりそうなものである。
論理的思考の欠如が参政党のウケる理由だとしたら、何をかいわんやだ。