時代遅れの新聞読みブログ

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将棋タイトル戦 新聞が増やした時代は終わった 藤井ブーム生んだ「観る将」は「棋譜」を読めない!?

YOU TUBE 囲碁将棋TV朝日新聞社 【対局Live】渡辺明名人ー藤井聡太竜王 名人の反撃か、最年少名人誕生か 解説・高見泰地七段~2日目夕休憩から~【第81期将棋名人戦・第5局】 - YouTube 名人位を取って、記者会見する藤井聡太竜王(肩書きは当時)


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「なぜ将棋のタイトルは八つもあるのか。」2日のテレビ朝日系「羽鳥慎一モーニングショー」で、1日の名人戦第五局に勝って、史上最年少(20歳10ヶ月)で名人・七冠(竜王、王位、叡王、棋王、王将、棋聖)を獲得した藤井聡太名人を取り上げたときに、タレントの長嶋一茂氏が素朴な疑問を発した。ちなみに、残るタイトルは王座である。


これに応えて、MCの羽鳥慎一アナはタイトルが増えたのは「新聞社がどんどんタイトルをつくっていったから」と説明した。実際、将棋の8タイトル戦のうち、叡王をのぞく7タイトル戦の主催は読売、朝日、毎日、産経、日経の大手新聞社や、ブロック紙、地方紙の三社連合、地方紙が加盟する共同通信の各社が、日本将棋連盟とともに主催している。(王将戦は毎日新聞と系列のスポニチ主催)


主催者の大きな役割は、有り体にいえば、賞金を出すこと、つまりスポンサーである。タイトル戦は本戦のほかに挑戦者を決めるリーグ戦やトーナメント戦が行われるが、この対局料も主催新聞社(通信社)から支払われる。(協賛会社がある場合は協賛会社もスポンサーとして応分の負担をしている。)


さて、多額の賞金(最高額は竜王戦=読売新聞主催で、優勝者4400万円、敗者1650万円)、対局料、さらに諸経費(会場費、交通費その他もろもろ)を払って主催する「見返り」は何だろう。それは、もともとは主催新聞(共同通信の場合は加盟する地方紙)が棋譜を紙面に独占掲載できることだ。


新聞社は、棋譜を紙面に掲載することで、将棋愛好家を引きつけ、部数を増やすことを考えたのである。そのむかし、将棋ファンは、いまの500万人=政府レジャー白書=より多かったと思われる。娯楽は少なく、将棋は縁台将棋という言葉があるように、将棋盤と駒があれば、おカネのない庶民でも楽しめたのである。もちろん、駒の動かし方とルールは知ってないといけないが。


将棋はいうまでもなく日本独自の知的「娯楽」である、新聞社が将棋普及のためにタイトル戦を主催することは、将棋連盟が掲げる「文化振興」にも合致する。


名人戦はタイトル戦の中では歴史がもっとも古い。戦前の1937年、東京日日新聞(毎日新聞の前身)の主催で始まった。のちに主催紙は朝日新聞に移り、また毎日新聞に移って、2007年からは朝日新聞と毎日新聞の共催となった。契約金のことでもめたのが一因といわれる。


タイトル戦のランク(序列)はまことに現金なことに、賞金の額で決まる。竜王戦は読売が名人戦に対抗して賞金額を上げ、ランク1位となった経緯がある。


さて、羽鳥アナは「新聞社がタイトル戦をどんどん増やしていった」と言ったが、2016年に新たにタイトル戦となった「叡王戦」の主催は不二家だ。新聞社(通信社)以外では初の主催者だ。


新聞各紙はインターネットの普及、活字離れに押され、深刻な部数減=売り上げ減少に悩んでいる。名人戦が朝日と毎日の共催になったことも、部数減=新聞の退潮と無縁ではないだろう。羽鳥アナが言った「タイトル戦を新聞がどんどん増やした」時代はすでに終わっているのである。


「人間離れ」した棋士・藤井のめざましい活躍で、ABEMA TVから、個人運営の将棋YOU TUBERまで、インターネットを使ったタイトル戦の実況中継は、「観る将」という新しいファンを生みだした。「観る将」は画面に示されるAIの最善手と、藤井の次の一手が一致するかどうかをじっと見守る、多くは藤井ファンだ。藤井は、時にAI超えの手を指すから目を離せない。


「観る将」の中には、昔は少しは指したと言う人もいるが、駒の動かし方、ルールを知らない人もいる。そういう新しいファン層が、新聞が長年、売りにしてきて、いまでも将棋欄に載せる「棋譜」や、専門記者による観戦記事を読むとは思えない。そもそも新聞を取ってないかもしれない。


藤井ブームでタイトル戦主催新聞社が受ける直接的な恩恵は、それほど大きくはないと思われる。


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