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輸入差益に頼る 小麦自給率アップに意味はあるか 「売り渡し」価格のカラクリ

農水省の輸入小麦マークアップ(輸入差益)説明図  


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政府は、輸入小麦の政府売り渡し価格について国際市況の高騰や為替円安で、4月から前年4月比5.8%引き上げ、1トン=7万6750円とすると発表した。輸入小麦が値上がりすると、政治家やら識者と称する人から「国内小麦の自給率を高めよ」という声が出るが、現状15%程度の自給率をあげることは簡単ではない。


ムリに小麦自給率を上げようとすると、小規模製粉業者や、製麺業者、街のパン屋、そして最終的には消費者の負担が増すことになるだろう。


小麦は国家貿易品目とされ、関税はかからないが、国が輸入価格に一定の差益(マークアップ)を上乗せして売り渡し価格を決める。


「差益」は、国産小麦の生産者に補助金(直接交付金)として支払われる。国産小麦は輸入小麦に比べて2倍以上も割高で、その差を埋めるためだ。


補助金(直接交付)額は、23年産小麦から改定され、20アールを超える小麦生産者の場合、60キロ=5900円(トンあたり9万8000円)である。ここ5年間の国産小麦の生産量は85万トン程度なので、補助総額はざっと833億円となる計算だ。


単純計算では、国産小麦が1万トン増えれば、補助金は9億8000万円ずつ増えることになる。一方、消費する小麦の量が変わらないとすると、輸入量=ここ5年間の平均で482万トンは1万トンずつ減っていき、トンあたりの課徴金(マークアップ)=需要家の負担は少しずつだが増えていく。


中華麺はほぼ100%米国かオーストラリア産の小麦を使っている。うどんも100%豪州産ということが少なくない。食パンは90%が輸入小麦だ。仮に100%の輸入小麦で作りたくても、差益(マークアップ)込みの「高い」輸入小麦を買うしかない。


もちろん、食料自給の向上のために、「割安な」国産小麦100%の製品を買う人もいるだろうが・・・。


小麦についていえば、そもそも、小麦の作付面積は約21万ヘクタールでここ10年、ほとんど変わっていない。収量は多い年に100万トンを越えたこともあるが、2018年には天候不順で70万トン台にとどまっている。簡単に増やせないことをよくわかっているのは、小麦生産者ではないだろうか。


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マークアップの額を具体的に書かなかったのは、農水省の資料に出ていないためである。(新聞記事にもマークアップに触れた記事は見つけられなかった)


以下は推定である。


昨年1年間の小麦輸入量は534万6000トン、金額にして3297億円で、1トンあたり6万1600円だった。農水省は1年間の買付価格で算定すれば、マークアップを含めた売り渡し価格が前年4月に比べて8万2060円になると説明している。それを考えると、マークアップは概算1トン=2万円程度となる。


実際の1トン=7万6750円とすると、マークアップは1トン1万5000円となる。500万トン売って750億円となる。


筆者は国産小麦農家に補助金を出すこと自体に反対はしないが、決め方に透明性がなさ過ぎると思っている。


国産小麦の「生産費」は大規模農家の場合でも、60キロ=約8000円(トンあたり13万3000円)で、とうてい輸入小麦には太刀打ちできない。(生産費は2021年農林水産省調査による)

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