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議論は続く IUT理論は「ABC予想」を証明したか 100万ドルの賞金提供も

     
ABC予想 - Wikipedia
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筆者は2021年11月に、京都大学数理解析研究所の望月新一教授が、新たに構築した数学理論「宇宙際タイヒミュラー(IUT)理論」を使って、フェルマーの最終定理を証明したというブログ記事を書いた。
望月京大教授ら IUT理論でフェルマーの最終定理を証明 - 時代遅れの新聞読みブログ


記事の中で書いているが、フェルマーの最終定理の証明は「おまけ」のようなもので、正確にいうと数論の難問とされる「ABC予想」を証明したというのが、IUT理論のいわば核心部だった。


筆者には、「ABC予想」をうまく説明する能力がなかったので、ABC予想よりはよく(?)知られている、フェルマーの最終定理を持ち出したのだが、それから2年たった今に至るも、IUT理論がABC予想を証明したかどうかについて、数学者の間で議論の決着はついていないようだ。


ある海外の著名数学者は、IUT理論について「京大の研究所の中だけで正しいとされる理論」という皮肉めいた評価を呈している。


今年7月には、ドワンゴ創業者で実業家の川上量生(のぶお)さんが、IUT理論の「間違いの証明」に100万ドル(約1億4千万円)の賞金を出すと発表した。果たして、間違いの証明をする数学者は現れるだろうか。
「ABC予想」の証明理論、欠陥見つけたら1.4億円 実業家が発表:朝日新聞デジタル
ここでは、前に触れなかった、「ABC予想」について、どんなものかを説明したい。


ABC予想は1985年に二人の数学者、ジョゼフ・オステルレとデイヴィッド・マッサーによって提起された。3つの互いに素である数の和と積の関係についての「予想」だ。


a + b = c
を満たす、互いに素な自然数の組 (a, b, c) に対し、積 abc の互いに異なる素因数の積をrad(abc) と表す。このとき、任意のk > 0 に対して、


c > d^(1+k) 注:d^(1+k)はdの(1プラスk)乗
を満たす組 (a, b, c) は高々有限個しか存在しないであろうか?


(注:ウィキペディアから借用したABC予想の式はk ではなく、イプシロンε と置いている。)


2つ以上の数が互いに素というのは、1以外の約数を持たないということ。例えば、1と2、2と3、3と5は互いに素である。2と4は約数2を持つので、互いに素ではない。


高々を、数学用語で使うときは、日常つかっている「高々1000円にもならない」の「高々=せいぜい」ではなくて、「多くても」有限個あるいはゼロという意味なのだそうだ。


手始めにa=1 b=2 とすると、c=3 で、1,2,3は互いに素である。
rad(abc)=rad(1*2*3)=6となる。
3<6なので、任意のkをいくらにとっても、不等式の向き< は変わらず、これは当てはまらない。


次に、a=2、b=3とすると c=5 で、2,3,5は互いに素である。
これも5<rad(abc)=2*3*5=30でイケない例だ。


不適切?な例ばかり紹介しても話が進まないので、
少し飛躍して、a=1 b=8 とおく。c=1+8=9
1,8,9は互いに素 8=2³ 9=3² なので
rad(1*8*9)=1*2*3=6


ここでk=0とおいた場合
c=9>6=rad(1*8*9)となり、>が成立している。


ただし、kは0でなく任意の値で成立するとしたのを思い出す必要がある。たとえば、k=0.2にした場合、6^1.2(6の1.2乗)=8.58<9なので、この不等式は成立する。


ところが、k=0.3とすると、6^1.3(6の1.3乗)=10.27 > C=9 で 不等号の向きは<になって成立しなくなる。


いまは関数電卓があるからべき乗の計算もラクできるのだが、なかったら、不等号の向きがひっくり返るkを求めるのも大変に違いない。
(ここからは続く)

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