「備蓄米放出」口先介入だけで米価は下がるか? 実現には万年経営難をいう「農協」の壁
YOU TUBE MBSNEWS 「コメはある」と話す江藤拓農水相
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農林水産省は31日、米価高止まり対策として、公称100万トン規模の政府備蓄米を、将来買い戻すことを条件に「市場」に放出する方針を打ち出した。
いまや消費者物価上昇の主役となった米価を抑制することがねらいだが、政府備蓄米のうち「売りモノ」になるのは品質の落ちる1年古米の2023年産米までとみられ、「口先介入」だけで米価を落ちつかせるは難しいだろう。
政府備蓄米は、年間コメ生産量(約700万トン)の約15%、合計100万トン程度を基本としている。毎年、新米を20万トンずつ入れ替えで、5年たった最古米は加工用に回される。
従来、政府備蓄を市場に出す(売却する)のは、記録的な不作(作況指数が80程度)のとき、つまり絶対的なコメ不足のときに限っていた。コメの価格調節(今回のようなコメ価格高騰時の「冷やし玉」)に使うのは、コメ価格を市場にゆだねる新食料管理法の趣旨にそぐわないというのが表向きの理由だ。
もうひとつの隠された理由は、JA・農協グループが在庫を抱えるリスクを負いたくなかったからである。旧食糧管理制度のもとでは、政府が政府米倉庫を持ち費用を負担していたが、いまは、主にJAグループの低温倉庫を借り上げて保管している(と思われる。)
31日に会見した江藤拓農水相は、「2024年は、2023年より18万トン多い679万トンのコメを集荷している。十分に供給されているのに市場に出てこないということであれば、どこかでスタック(詰まっている)していると考えざるを得ない」と述べた。
確かに、政府が具体的にウン万トンの備蓄米放出を決めれば、先高感は消えるかもしれないが、いまのところ方針を示しただけで、口先介入にとどまっている。
そもそもコメ流通の40%以上を握るJAグループは、24年産米を高く売れるうちに売ってしまいたいはずだ。外食産業など大口取引先との間で契約をした(備蓄に売れない)コメもあるだろう。
となると、政府が放出できるコメは品質的に落ちる「一年古米」の23年産米になるとみられるが、いったい、いくらで売れるだろうか。(以前は、年産表示が必須ではなかったので新米に古いコメをまぜる混米という手法があったが、いまはできない。)
石破茂首相にとって大きな誤算は、米価が記録的な上昇をみせたのに、先の衆院選挙で敗北の憂き目をみたことだ。その一方で、コメ価格上昇によって、都市部の消費者からほとんど怨嗟の声があがっている。
JA新聞(電子版)はこれだけ米価が上がってもなお小規模農家はやっていけないと主張している。そのうち、地方の実家というものがなくなった都市住民から、「この米価でやっていけないなら辞めてもらって結構。安い外国産米をしかるべき関税をかけて輸入すればよい」という声が出てくるだろう。
