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悪いインフレ2%への対応は 最低賃金3%超引き上げしかない 参院選(後)の焦点に


黒田東彦・日本銀行総裁の「家計の値上げ許容度が高まる」との発言をきっかけに、「インフレ対策」が政治問題に浮上してきた。参院選後に本格化する最低賃金の改定では、2%のインフレ率を帳消しにする、3%以上の賃上げが議論されることになるだろう。


労働組合の全国組織「連合」のまとめによると、今春闘で連合傘下の労組は2%強の賃上げがとなっている。


近年、労働組合の組織率が低下する一方、賃金が正社員より低い「非正規労働者」の割合が増えており、最低賃金の下支えとしての役割は大きくなっている。


最低賃金については、2015年に安倍晋三元首相がデフレ脱却をめざして「年3%」の引き上げをめざすと表明して以降、首相の「影響力」が強まった。実際、2016~19年の時給額の全国加重平均は、年3%に相当する25円以上の幅での引き上げが続いた。


とはいうものの、本題に入る前に、最低賃金は首相が決めるものではないことを、断っておく必要がある。


最賃の決め方は、まず、厚生労働相の諮問機関である「中央最低賃金審議会」が47都道府県を4グループに分けて、経済状況に応じてグループごとの目安を示す。


審議会は学識経験者(中立)、労働者側(労組)、使用者側委員と分かれており、基本的には3者が協議の上、合意して決める。


中央審が出した「目安」を参考に、都道府県ごとの地方の最賃審議会が引き上げ額を話し合い決めることになる。


2020年はコロナ禍が拡大し、政府も「雇用を守ることを最優先にする」と表明せざるを得なかった。中央の最賃審議会も「現行水準の維持が適当」と目安を示さず、全国(加重)平均の引き上げ幅は1円にとどまった。


昨年は、菅義偉首相(当時)が「早期に全国平均1000円をめざす」と表明し、中央最低審議会も加重平均28円以上の引き上げを全国一律で提示し、時給は全国加重平均で28円(3.1%増)の930円になった。


決定に際して、日本商工会議所など使用者側委員は、地方、中小の観光・宿泊関連や飲食業が新型コロナ禍による客の減少で打撃を受けており、大幅な賃上げには耐えられないと反対し、長く続いた「三者合意」による決定が崩れた経緯がある。


岸田文雄首相は、このほど打ち出した「新しい資本主義」の中で、「人への投資と分配」として、最低賃金の全国平均を2025年度にむけて「1000円以上となることを目指す」と書いている。今年度から昨年と同じく28円ずつ上げていけば2024年度には達成できる目標だ。


ただし、今年は黒田・日銀総裁の発言で、2%インフレが大きくクローズアップされた。昨年に続いて、3%超の賃上げがないと「世間一般」の感覚としては「許容できない」のではないか。


一方で懸念されるのは、コロナ禍明けの中小・零細企業、地方の企業に「賃上げ」に耐えられる体力があるかどうかだ。


コロナ禍の収束による需要=売上増の前に、エネルギー価格の高騰、為替円安による「悪いインフレ」が先にきたのは、なんと言っても大きな懸念材料である。


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野党では立憲民主党は最低賃金について、中小企業支援を前提に時給1500円を目指し段階的に引上げるとしている。共産党は全国一律1500円に速やかに引きあげるとの方針を掲げている。


中央、地方の最低賃金審議会の労働側委員は労組の全国組織、「連合」系労組の出身者が多い。立憲と「連合」の関係は前の衆議院選挙以来、共産党との共闘問題をめぐって距離が開く一方で、審議会を通しての「立憲」の関与力は弱まっていると思われる。

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