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大手電力 子会社情報 不正利用の背景 「発送電分離」形骸化のつけ 関電一部社員 違反承知で営業利用

YOU TUBE MBS NEWSより 関西電力『社員ら1013人が競合他社の顧客情報4万件を不正閲覧』一部で営業活動に悪用(2023年1月30日) - YouTube


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関西電力など大手電力会社6社で、送配電・子会社の持つ「新電力」の顧客情報を、自社の営業部門や業務を委託する会社の社員が閲覧していたことがわかった。


電力小売りの自由化に伴い、新規参入する「新電力」との公正な競争を促すため、発送電の事業分離が行われた。2020年4月からは、電気事業法で送電子会社の持つ顧客情報を、本体の営業部門(系列別会社)が使うことは禁じられている。関電では法令違反と知りつつ自社の営業活動に利用していた事例まで発覚した。


大手電力は送配電部門を分離したはいえ、100%子会社としている。また、送配電子会社の顧客情報のデータベースに親会社の営業部門がアクセスできるようになっていた。(業務委託する会社からも閲覧可能だった)。発送電分離が「形骸化」していたことを示すものだ。


関西電力以外で、顧客情報を不正に閲覧していたのは、中部電力、東北電力、中国電力、四国、九州の各大手電力。中部電力は、電力小売りをする、100%子会社「中部電力ミライズ」の社員が、送配電会社の「中部電力パワーグリッド」の顧客情報を不正に閲覧していた。
(2022年12月4日から10日までの間で、3600件の不正閲覧があった。同社は「営業利用は確認されていない」といっている。)


電力自由化に伴って、多くの「新電力」会社が電力小売りに参入した。多くは自前の発電施設を持たず、電力卸市場で電力を調達し、送配電会社(たとえば関西電力送配電)に「託送料金」(いわば送電線、変電所の使用料金)を払い、事業所や家庭に送電する。


発送電分離により、発電会社と送電会社は、別会社(別会計)となった。しかし、新電力の顧客情報が、送電子会社のシステムを通じて、親会社の小売り営業部門(または電力小売りをする子会社)に筒抜けになり、「乗り換え」営業されては、「公正な競争」などありえない。


送電会社の持つ顧客情報(需要家の名前、連絡電話、消費電力量)の遮断は、最低限やるべきことであり、電力販売(小売り)事業の親会社との資本切り離しも検討対象になり得る。


関西電力は大口契約をめぐって他の大手電力と価格カルテルを主導した問題も発覚している。コンプライアンスの意識が希薄で、地域独占が認められていた昔の意識が抜けていないのではないか。


発送電分離といっても、送配電部門を100%子会社にして、発電をになう親会社の下にぶら下げる、形式的な「分離」だった。関西電力は情報システムの完全な切り離しは、技術的に難しかったと釈明しているが、顧客情報の共有禁止は、発送電分離が議論された当初から言われていたことだ。認識の甘さはぬぐいきれない。


昨年からの燃料価格高騰で、自前の発電施設を持たない新電力は、市場からの調達価格と販売価格が逆ざやになり、事業撤退する会社が出ている。新電力の需要家が電気料金の上昇に耐えかねて、規制料金で上限のある大手電力に回帰する動きもあるようだ。(その上限価格をあげようという動きも出ている。)


大手電力会社がどこまで本気で、顧客情報の不正利用問題に取り組むかは見ものだと(筆者は)考えている。


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送配電子会社の「資本的な切り離し」=完全な別会社化が必要も考えられるが、電力会社の経営が、経産省のさじ加減で決まっている「託送料金」で支えられている現状では、難しいだろう。託送料金は家庭用電気料金の場合で、30~40%を占めているといわれる。各配送電会社は、9大手電力の100%子会社で、自由化以前とかわらない地域独占状況が続いている。

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