「コメだけ自給論」の落とし穴 コムギ自給率18%は見ないふり
上の図にあるコムギ、大豆の生産量と輸入量は近年の平均的なデータ。小麦は年によって、かなり輸入量の変動がある。
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参院選では、ほとんどの政党がコメの生産増、食料自給率の向上を主張しているが、コメに次いで日本人が口にする穀物=コムギの80%を、輸入に頼っていることに知らぬ顔をするのはいかがなものか。まったくのご都合主義というほかはない。
参政党は食料自給率100%を公約に掲げているが、農地に限りがある現実に立ち戻れば夢想でしかない。同党が農家票の多い参院地方区で議席を取ったら驚きである。
コムギの国内生産は100万トン。1970年代に30万トンにまで落ちたが、コメ余りの時代に転作作物として作付け面積が増えてきた。見方を変えれば、コメとコムギの生産はトレードオフの関係にあり、コメの増産とコムギの増産は両立しえない。
コムギの輸入量は450万トン。コムギのコメ(主食用玄米換算)は国内生産680万トンに対して輸入は10万トンだ。
コメとコムギは重さあたりのカロリーがほぼ同じで、比較しやすい小麦粉と米粉でみると100グラムあたり約370カロリーだ。
コメとコムギをあわせた国内生産は780万トン。輸入は460万トンで、コメとコムギのカロリー自給率はざっと計算すると、63%になる。(ちなみにコメの生産がピークを迎えた1965年の自給率は73%だった。)
コムギ生産は、コメに比べると規模拡大が進んでおり、生産コストも下がっているが、質はともかく価格では輸入小麦に太刀打ちできない。(昔は質もよくなかった。讃岐うどんも多くはオーストラリア産のコムギを使っている。)
いまでも、政府は小麦の自給率向上のため、補助金(経営安定交付金)を出して支えている。その原資の一部は、政府が輸入コムギにかける「マークアップ」という名の上乗せ金だ。
「コメだけ自給論」をいう人は、小麦の自給率向上をあきらめているのかもしれないが、参政党の場合は、農業の実態を本当にわかっていない可能性がある。というのは参政党は輸入依存90%の大豆の増産も言っているからだ。農地がいくらあっても足りないし、すべての食品がおそろしく高くなるだろう。
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コムギの作付面積は22万ヘクタール。仮に輸入分を国内でつくるなら、94万ヘクタールの農地が必要となる。今のコメの作付面積が125万ヘクタールだから、その7割に当たる。到底、無理なことを参政党は言っている。
コムギはWTO協定で、国家独占貿易品目として関税除外が認められている。ただし、政府が独占輸入しているので、マークアップを実質的な関税とみることもできる。