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岸田首相 脱CO2の会議で原発新増設をいう「筋違い」再エネ普及失敗のつけ回し

(原発新増設を歓迎する戸嶋秀樹・美浜町長 福井テレビホームページより。
政府の原発新設・増設方針 敦賀市・美浜町が大きな期待感 | ニュース | 福井テレビ


岸田首相は8月24日のオンライン会見で、脱炭素社会の実現に向けて、原発の新増設や建て替えをすすめる考えを示した。政府は福島第一原発事故後、原発の新設や増設、建て替え(リプレース)は「想定していない」との立場だったが、180度転換した格好だ。


新聞論調は、世論と同じくふたつに割れた。脱原発を旨とする朝日新聞は社説で「原発政策の転換 (原発)依存の長期化は許されない」と岸田首相の「変節」をきびしく批判した。


一方、もともと原発再稼働に積極的な読売新聞は、「電力の需給ひっ迫が続く中、安定して供給できる原子力発電所の重要性が増している。新増設に方針転換したことは評価できる」と賛意を示した。


反対、賛成それぞれに理由はある。筆者が気になるのは、岸田首相が原発政策の方針転換を「宣言」したのが、脱炭素社会の実現を議論する会議だったことだ。


たしかに、原発は発電の仕組みからいって、二酸化炭素(CO2)をださない。(少しは出す)しかし、政府は福島第1原発の事故による、広範囲の放射能汚染、住民多数に長期避難を強いた反省から、脱CO2は、風力エネルギーや太陽光発電など再生可能エネルギーの導入・切り替えと、CO2発生量が少ない天然ガス(LNG)の利用拡大によって達成する――を基本的な立場にしてきた。


既存原発に付いては、新規制をクリアし安全が担保され、地元同意が得られたものは稼動を認める。


岸田首相が、ここにきて原発の新増設をいう背景には、想定したほど再生エネルギーが伸びていないこと、加えて足もとのLNG高騰があるとみられる。


実際、再生エネルギーの主役である、太陽光発電の伸びは鈍化している。九州、四国電力管内では発電力が大きくなる6月に、需要を超える太陽光発電の買い取り停止をした。


大規模な太陽光発電施設が、崖崩れ災害を誘発するおそれがあるとして、住民運動が起きて止まった事例もある。


増設の余地は少なくなっている。


風力発電は2000年代初頭、経済産業省が、風の季節変動が大きいこと(一例は台風)、山がちな日本は立地が難しいことなどから、開発にストップをかけた。手がけていた電機大手は事業を海外に売却してしまった。


福島原発の事故後、欧州が先行する洋上風力発電の導入促進を打ち出し、東北、北海道や房総沖で大規模風力発電が実現しつつあるが、頼れる電力原になるのは5~10年先のことになりそうだ。(大型風車は100%海外からの輸入である。これが日本の残念な現状である。)


経済産業省はかつて風力発電を見切ったころ、「脱CO2は原子力発電で達成する」と言っていた。筆者には岸田首相の原発新増設発言は、かつての経産省のスローガンが復活したかのように聞こえる。


岸田首相はかねがね、国民に丁寧な説明をすると言っている。それならば、原発の新増設をいう前に、再生エネエルギーの伸び悩みの理由と、増やすための方策を説明して、その上で、原発再稼働の理解を求めるべきではないか。原発新増設はその先にあるテーマだろう。


岸田首相の原発新増設への転換発言について、原発立地自治体の福井県・敦賀市長、美浜町長らは「歓迎」の意向を示している。


留意するべきは、新増設・リプレース(建て替え)といっても、原発の建設は基本計画から着工、稼動まで8年程度はかかることだ。


敦賀市の場合も、東日本震災後、計画が凍結された日本原子力発電・敦賀3、4号機の早期着工を期待している状況だ。政府が新増設に方針を変えたからと言って、足もとの電力需給に影響はないということを指摘しておきたい。


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蛇足


朝日新聞は、既存原発の再稼働も新増設も認めないという立場のようだ。一貫した姿勢だが、新規制をクリアして、地元同意が得られた場合、(既存)原発の再稼働は朝日新聞も、認めざるをえないのではないか。現実に福井の美浜や敦賀のような自治体がある。朝日新聞の世論調査でもこのところ原発稼動を容認する割合が増えているようである。


読売社説は、新増設への転換は「遅いぐらい」といい、原子力規制委に対して、「経済界や電力業界とコミュニケーションをはかり、合理的、効率的な審査を目指してもらいたい」と注文をつけている。フクシマ以前のなあなあの関係に戻れと言うわけではあるまいが、効率的な審査とは何を意味するのか。安全性に目をつぶれということではあるまい。

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