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なぜ黒田総裁は「利上げ」を認めないのか 「異次元緩和」固執はもはや老害 国債市場を壊したのは日銀

黒田東彦・日銀総裁
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日本銀行は20日の政策決定会合で、長期金利(10年もの国債金利)の上限を0.25から0.50%に引き上げた。


日銀の黒田総裁は従来、記者会見や国会答弁で、景気を下支えするため量的・質的金融緩和(異次元の金融緩和)を「粘り強く」続けると繰り返し述べていただけに、金融・証券市場は突然の「利上げ」と受け止め、長期金利は上昇、為替は大きく(一時5円近く)円高に振れた。日経平均株価は一日で600円を超える値下がりを演じた。


新聞、ネットでは「日銀に裏切られた」「信頼関係が崩れた」というエコノミストらの声が紹介されている。平たく言えば「だまされた」と言っているのだが、黒田総裁は記者会見で「だまされたと言う方がおられるが、金融資本市場の動向や経済物価の動向が変わればそれに応じたことをやるのは当然だ」と語っている。


黒田総裁は今回の長期金利の上限引きあげについて、「国債市場の金利形成能力の改善をはかるため」と記者会見で話しているが、金利形成能力をゆがめているのは、自分が旗を振って始めた量的・質的金融緩和の結果なのだから、説明になっていない。(国民の99%は理解できないと思う。筆者もその一人だ)


99%の一人として、隠された?ねらいを推測すると、長期金利の上限を上げたのは、為替が円安に振れ戻すのを止めるためだろう。


円ドル相場は年初には1ドル=115円程度だったが、米FRB(連邦準備制度理事会)が3月にインフレ抑制のため利上げに転じて以降、円安(ドル高)がすすみ、10月には1ドル=150円を突破して、歴史的な安値をつけた。


10月21日に政府・日銀が5兆円を超す大規模介入をしたのを機に円高に転じ、政策決定会合前の12月4日は1ドル=134円程度の水準になっていた。


今月13日、米連邦準備制度理事会(FRB)は政策金利をさらに0.5%幅引きあげた。上げ幅は大方の予想通りだったが、インフレが収束しない場合、来年以降も利上げをする可能性が出てきた。(理事がそれぞれ先行きの金利予想をして、ドットチャートを公表する)


日銀はエネルギー・原材料価格の上昇が一巡すれば、消費者物価上昇率は1%台(2%以下)に下がると予測している。(政策委員会議事録によると、審議会委員のほぼ一致した見通しだ。)


足もとの消費者物価上昇率は3.7%と4%に近い。米国がさらに追加利上げをして、日米金利差が拡大した場合、輸入物価の上昇が消費者物価をもう一段、押し上げる可能性が強い。円安を止めるために「利上げ」を考える政策委員がいてもおかしくはない。


黒田総裁はなぜ「利上げ」を認めないのか。推測するに、黒田総裁は以前、「金利だけで円安を止めようという話であれば、大幅な金利引き上げになり、経済に悪い影響が出る」と言っていた。それに反するからだ。量的・質的金融緩和が失敗に終わったと認めることになると考えているのかもしれない。、


黒田総裁の任期は来年4月。それまでは、長期金利の上限の追加引きあげや、マイナス0.1%の短期金利(市場の機能を殺している最たるモノだ)の解除は、ないと言われている。機動的な金融政策を阻害しているなら、ある意味、老害ではないか。


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2013年にスタートした異次元の金融緩和は、日銀の金融政策の目標を大きく変えた。単純化すれば、金利をゼロにクギ付けする市場を介した金融調節から、短期長期の国債、CP、株式投資信託などの資産の買入によって、市中に出回るおカネ(マネタリーベース)を増やすことに転換したのだ。


日銀は国債を買い入れる一方なので、金利カーブがゆがむのは当然の帰結である。21年3月からは、長期金利の上限を0.25%として、国債を指定した価格(指し値)で無制限に買い入れてきた。他の年限の国債にくらべて、10年もの国債に割高感(国債の年限ごとの金利カーブがゆがんだ)が生じて、新発10年物国債の取引が成立しない状況、つまり機能不全に陥ってしまった。


市場の機能不全を起こしたのは黒田総裁がすすめた「異次元の金融緩和」であって、自然発生的に起こったような黒田総裁の言い方は詭弁を弄するものだ。

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