ABC予想を「証明」 IUT理論公表から10年 追跡の朝日新聞・石倉記者「論争は迷宮に」と区切りの記事
朝日新聞の石倉徹也記者は、京都大学数理解析研究所の望月新一教授(56)がつくりだした宇宙際タイヒミュラー理論(IUT)を追ってきた、全国紙でも稀有なライターだが、8月30日の紙面と電子版で、3か月ぶりに同理論について特集記事を書いた。(5月に2回連続の特集記事を書いている。)
記事によると、海外の数学者の間では、「(IUT理論が証明したとする)ABC予想は京都大学では定理だが、それ以外では予想である」という皮肉めいた評価が続いており、理論が正しいかどうかの論争も海外では下火になっているようだ。
筆者が注目したのは、石倉記者の肩書が、5月の特集記事から科学医療部記者からコンテンツ編成本部次長に変わっていることだ。
記事によると、IUT理論がインターネット上で公表されたのは13年前の2012年の8月30日だった。IUT理論を追ってきたの石倉記者の記事は、この記事をもって一区切りとなるかもしれない。
IUT理論が注目されたのは、理論を使って、数学の難問中の難問、「ABC問題」を証明したとはなばなしく登場したからだった。
以下、「付録」としてABC問題を説明する。筆者にとって、IUT理論はまったく理解不能なので、せめてABC問題を取り上げる次第である。
ABC予想は1985年に二人の数学者、ジョゼフ・オステルレとデイヴィッド・マッサーによって提起された。3つの互いに素である数の和と積の関係についての「予想」だ。
a + b = c
を満たす、互いに素な自然数の組 (a, b, c) に対し、積 abc の互いに異なる素因数の積をrad(abc) と表す。このとき、任意のk > 0 に対して、
c > d^(1+k) 注:d^(1+k)はdの(1プラスk)乗
を満たす組 (a, b, c) は高々有限個しか存在しないであろうか?
(注:ウィキペディアから借用したABC予想の式はk ではなく、イプシロンε と置いている。)
2つ以上の数が互いに素というのは、1以外の約数を持たないということ。例えば、1と2、2と3、3と5は互いに素である。2と4は約数2を持つので、互いに素ではない。
高々を、数学用語で使うときは、日常つかっている「高々1000円にもならない」の「高々=せいぜい」ではなくて、「多くても」有限個あるいはゼロという意味である。
手始めにa=1 b=2 とすると、c=3 で、1,2,3は互いに素である。
rad(abc)=rad(1*2*3)=6となる。
3<6なので、任意のkをいくらにとっても、不等式の向き< は変わらず、これは当てはまらない。
次に、a=2、b=3とすると c=5 で、2,3,5は互いに素である。
これも5<rad(abc)=2*3*5=30でイケない例だ。
不適切?な例ばかり紹介しても話が進まないので、
少し飛躍して、a=1 b=8 とおく。c=1+8=9
1,8,9は互いに素 8=2³ 9=3² なので
rad(1*8*9)=1*2*3=6
ここでk=0とおいた場合
c=9>6=rad(1*8*9)となり、>が成立している。
ただし、kは0でなく任意の値で成立するとしたのを思い出す必要がある。たとえば、k=0.2にした場合、6^1.2(6の1.2乗)=8.58<9なので、この不等式は成立する。
ところが、k=0.3とすると、6^1.3(6の1.3乗)=10.27 > C=9 で 不等号の向きは<になって成立しなくなる。
いまは関数電卓があるからべき乗の計算もラクできるのだが、なかったら、不等号の向きがひっくり返るkを求めるのも大変に違いない。
(ここからは続く)