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黒田総裁は初歩理論しか知らなかった? 理論派・植田氏に重荷残して去る

YOU TUBE TBS NEWS DIGより、日銀総裁に内定した植田和男氏
【ノーカット速報】日銀総裁起用固まった植田和男氏インタビュー「説明分かりやすくする必要」|TBS NEWS DIG - YouTube


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日本銀行の新総裁に「内定」した元東大教授・日銀政策委員の植田和男氏は、10日に記者団のぶらさがり取材にたいして、「現状では金融緩和の継続が必要であると考えています」と述べた。この発言を受けて、急速な「緩和」修正はないとみて、13日のドル円相場は前週末に比べて、1円以上ドル高円安の1ドル=132円台の取引となっている。


筆者は、植田氏が「緩和継続」を言った後で、「(これまで)学者できましたので、判断は論理的にするということと、説明はわかりやすくするということが重要と思います」と言ったことを重視している。


植田氏は日銀審議委員だった2001年の「量的緩和政策」の導入を理論面で支えた。しかし、黒田氏の「異次元(量的質的・金融緩和)には論理的でないところがあると見ているようだ。


筆者が(独断ながら)「論理的でない」ところをあげると、直近では、昨年12月20日の日銀金融政策決定会合後にあった、黒田氏の記者会見での説明だ。同会合では、長期金利(10年物国債金利≒利回り)の上限を0.25%から0.50%に引きあげ、これが「事実上の利上げ」と報道され、市場もそう受け止めた。


同会合では、「金利の下限もマイナス(―)0.25%から-0.50%に下げており、黒田氏は「金利の変動幅を広げたもの」で、「利上げでない」と強弁している。


金利の変動率は「金利ボラティリティ」ともいい、12月まで、日銀は長期金利の目標値をゼロにおき±0.25%の変動を許容していた。(本来、金利は市場で決まるもので、日々変動し、ときには行き過ぎる。理論的にこのくらいの変動はあるだろうというのが、「ボラティリティ」のごくざっくりした説明だ。)


金利の変動幅が大きくなると、為替や国債価格の変動も大きくなるのは理の当然で、本来はその安定を旨とする中央銀行は金利変動幅の拡大(それもマイナス側への拡大)をやるべきではない。


黒田総裁は東大法学部卒業して大蔵省に入ったエリート中のエリートだが、日銀が国債を買い入れて、債券価格を上げれば金利=利回りは下がるという初歩的な知識しか持ち合わせていないと思われる。残念なことである。


(日銀担当記者並びに市場関係者にも、金利の下限を下げたことに疑問を呈していないが、おそらくは黒田氏が「ボラティリティ」を十分に理解していない(論理的でない)ことは、以前から承知しており、聞き流したのだろう)


すでに報道されているが、植田氏は東大の物理学部数学科を出た後、学士入学で東大経済学部に入り、数理経済学や国際金融論を学んだ。その後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)に留学し、FRB副議長やイスラエル中央銀行を務めた著名経済学者スタンレー・フィッシャー氏の指導をうけ博士号を取った。


経歴からいって、植田氏に「金利ボラティリティ」について尋ねるのも失礼なことだが、12月に長期金利の下限をマイナス0.5%にまで下げたことを、マズかったと考えている可能性は十分あることだ。


ただし、量的緩和は推し進めたが、「質的緩和」でマイナス金利まで突き進んで、導入したことの評価はよくわからないところがある。


長期金利は2月に入って(植田氏の内定報道がでる前)から、上限の0.5%に張りついて推移している。政策決定会合は2月にはなく、3月は3 月 9 日、10 日に開かれる。


黒田総裁任期中、最後の会合となる3月までは、0.5%に抑え込んだとして、いずれ時間の問題で、植田新総裁執行部が上限を0.75%にあげることになるだろう。そうしないと、国債の消化ができないところまで、超低金利が続いたことによる、金利カーブのゆがみが高じているからだ。


そのときに、金利の下限のマイナス金利をやめて、ゼロとすると、量的・質的緩和からの転換とみて、市場に波乱が起きるおそれが十分ある。下限マイナス0.5%をマイナス0.25%にしても、金利は引き上げ方向に変わったと受け止めるだろう。


12月の政策決定会合では、長期金利の下限をマイナス方向に広げることで、黒田総裁もしぶしぶながら上限引き上げを受け入れたともいわれている。


ブルームバーグ通信はサマーズ元米財務長官が、植田氏が新総裁に内定したことについて、植田氏が高い能力を持つと認めた上で、「日本では極めて複雑な問題が待ち受けている。イールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)政策をいつまでも維持することはできないと思う。植田氏の能力が試されることになる」と指摘した、と伝えている。


最後に、「複雑な問題」は安倍晋三元首相(およびその追従者)と黒田日銀がおしすすめた「異次元の金融緩和」がつくりだしたことを改めて指摘しておきたい。

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