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実質賃金はプラスになるか? 「連合」集計 定昇込み5%に惑わされるな 「実質」決める ベアは3.5%

定期昇給とベースアップの概念図 定期昇給があるのは旧来型企業との説もあるが、なお5割から6割の企業で採用されているという調査も。
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インフレに賃金アップが追いつかず、実質賃金のマイナスが2年近く続いているが、新年度4月からの賃上げでプラスに浮上できるだろうか。


賃上げは、定期昇給(定昇)とベースアップ(ベア)を合わせた額となる。定期昇給は、求人広告に「(定期)昇級あり」などと書いているアレである。会社の賃金規定によるが年に1回(または2回)という会社が多いようだ。


連合の最新の集計によると、4月16日時点で回答のあった3283組合の定昇込みの賃上げ率は5・20%だった。(額は加重平均で1万5787円)


同じ時点で、ベアと定昇を明確に区別できる2587組合のベア率は3.57%(額は1万0827円)だった。


ざっくりベアと定昇分に分けると、ベアが3.5%程度、定昇が1.5%程度になるだろうか。


23年度の消費者物価上昇率は3.0%だった。直近、3月の消費者物価は前年同月比で2.7%上がった。


定昇込みの賃上げ率5%を採用すると、今年度の物価上昇率が仮に3%程度におくと実質賃金はプラス2%になる。しかし、ベア率3.5%を採用すると、物価上昇と打ち消しあってトントンになる。(賃上げによる余裕を実感できない!?)


さて、実質賃金を考えるとき、定昇込み賃上げ率とベア率のどちらを使うべきか。答えは簡単でベア率である。(定昇制度がない企業で、ベアだけというなら話が違ってくるが)


改めて定期昇給を説明すると、例えば初任給21万円から始まって、基本給が4,000円ずつ上がっていくケースを考える。2年目に21万4000円、3年目は21万8000円・・・・と上がっていく。


給与が勤続年数(と実績)を重ねるにつれて上がる、いわゆる「年功序列賃金」型のカーブになる。


個人でいえば毎年4,000円ずつ上がっていくのだが、会社全体でみるとどうか。各年齢(勤続年数)に同人数の社員がいる場合、この賃金カーブが続く限り、社員の平均賃金、賃金総額は変わらないことになる。(経営側でいうと、賃上げに使う原資は変わらない)


ベースアップは賃金カーブ自体が上にシフトするわけで、平均賃金、賃金総額ともに上がる。


さて、「連合」の賃上げ率に話を戻すと、連合傘下の労組は大企業労組が多く、数字が高く出る傾向があることに留意する必要がある。加えて、労組の組織率は年々下がり、いまは全雇用者(≒労働者)の16.5%(660万人)にとどまっている現状もある。


「連合」は基本的には正社員労組である。流通大手などのパート労働者は「連合」加盟だが、2000万人を超える、パート、アルバイト、短期雇用など非正規労働者のほとんどは連合はもちろん労組に入っていない。


岸田文雄首相はこのところ「連合」へ接近して、賃上げを促してきたが、掛け声だけで全体の実質賃金がプラスになるとは思えないのである。


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連合傘下の中小企業労組(従業員300人以下)は、賃上げ率4.69%だった。連合の芳野友子会長は昨年同時期の3.42%を超えたことを、健闘だとしてたたえている。


一方、厚労省の毎月勤労統計調査によると、今年2月の労働者1人あたりの実質賃金は前年同月比でマイナス1.3%だった。同調査は従業員5人以上の事業所を対象にしており、正社員、非正社員を問わない平均賃金でみている。


24年度の実質賃金プラスを達成するには、前年度に消化しきれなかったマイナスを埋めて、さらに4月以降の物価上昇を上回る賃上げが必要になる。名目賃金が3%程度上がったとしても、消費者物価が2%程度に収まらないと、実質プラスは難しいのではないか。

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