時代遅れの新聞読みブログ

前期高齢者が新聞(紙、電子)・ネットのニュースをフォローします。

米EV税制優遇 西村経産相「日本のバッテリーは対象」発言のナゾ 重要鉱物は100%輸入

YOU TUBE テレ東BIZより、EV優遇税制を受けられる見通しと語る西村経産相
日本のEV 米国EV優遇税制適用へ(2023年3月28日) - YouTube
++++++++


米国で電気自動車(EV)を購入する際の所得税控除(税制優遇)について、日産が米国で生産するEV車「リーフ」への適用が注目されていたが、米政府が18日に発表した、税制優遇の対象となるEV車リストにはリーフはなかった。


西村康稔経産相は3月28日に「日本で採取、加工された重要鉱物を使ったバッテリー製品が税制優遇の対象に含まれる」との見通しを述べたが、今となっては見当外れと言わざるをえない。


EVの税制優遇措置は、購入の際、1台当たり最大7500ドル(約100万円)の所得税が控除される仕組み。エンジン車に比べて価格が高いEV車にとっては、ありがたい優遇策だ。(リーフの北米での販売価格は380万円程度だという)


適用条件の第一は「車体が最終的に北米で組み立てられている」ことで、テネシー州スマーナで生産されているリーフは、この点をクリアしている。


日産リーフが適用外となったのは、搭載する電池が、今年3月末に新しく追加された基準を満たさなかったためとみられる。


電池については①EV用電池に使われる重要鉱物の一定割合(40%)を、米国または米国と自由貿易協定などを結ぶ国から調達する。②電池部品の総価格の50%が北米で製造されている、ことが条件だ。


① ②をともに満たせば7500ドル、いずれかだけなら半額の3750ドルの税控除を受けられる。


いうまでもなく、電池はモーターと共にEVの最重要部品。主流はリチウムイオン電池だが、中国は電池材料のリチウムや黒鉛の主要産出国で、リチウム電池生産では中国のCATL、BYDの2社が世界シェア50%を占めるとされる。(中国メーカーには鉱物採掘から精製、加工、製品化を一貫してできる技術を持つ強みがある。)


日産はもともとリーフ用の電池をNECとの合弁会社「オートモーティブエナジーサプライ」(AESC)でつくっていたが、2019年に同社を中国系エンビジョン社に売却している。AESCはスマーナにも拠点があり、リーフ用の電池を供給している。その電池が①②の条件を満たさなかった可能性が高い。


さて、3月28日の西村経済産業相の記者会見にもどると、気になるのは「日本で採取、加工された重要鉱物を使ったバッテリー製品・・・」と述べていることだ。


日本で採取できるEVに使われる重要鉱物は皆無である。主材料のリチウムでいえば、炭酸リチウムは81%をチリから、水酸化リチウムの63%を中国から輸入している。中国はもちろんチリも米国とはFTAを結んでいない。


28日の発言は西村氏が何らかの、それも大きな勘違いをしていた可能性がある。3月31日に新基準が明らかになる前なので、「情報収集」が足りなかったということかもしれない。


西村経産相は19日、米政府通商代表キャサリン・タイ氏と意見交換し、EVへの税制優遇適用要件の見直しを求めたが、「形作り」の感は否めない。


税制優遇策はインフレ抑制と二酸化炭素削減の二つのねらいがあるが、隠れたもうひとつのねらいはEVとEV用電池で急速に台頭する、中国勢の「サプライチェーン」からの排除である。(インフレ抑制は米国内でも期待されていないらしい)


日本勢は中国の製造拠点でもEV化を迫られており、そこでは中国のサプライヤーとの協業は欠かせない。難しい立場にあるところに、非力な経産省ではアタマを抱えざるをえない。

×

非ログインユーザーとして返信する