時代遅れの新聞読みブログ

前期高齢者が新聞(紙、電子)・ネットのニュースをフォローします。

アンモニア発電の不都合な真実 製造時に大量のCO2発生 G7環境相会合で批判も

YOU TUBE ANN NEWSより、「G7広島」に向け“環境大臣会合” 札幌市で開幕(2023年4月15日) - YouTube
++++++++
岸田文雄政権が進める気候変動対策「GX(グリーン・トランスフォーメーション)」は、石炭火力発電所の燃料にアンモニアを使うことを「脱二酸化炭素(CO2)」として打ち出している。


アンモニアは燃焼時にはCO2を出さないが、現在、主流のアンモニア製造工程で、化石エネルギーを使うため大量のCO2を発生する。


この点は、4月15、16日の両日、札幌市で開かれた主要7カ国(G7)気候・エネルギー・環境相会合でも問題視され、環境金融研究機構はホームページで、日本が進める、石炭火力発電所の燃料にアンモニアを混ぜて使う計画に、他の6カ国が反対もしくは懸念を示したと伝えている。


G7の中で「孤立する日本の脱炭素政策」。アンモニア混焼、CCS依存に他の6カ国が懸念。日本の現状のCO2削減度合いも、G7の中で「最低」。Bloombergが分析(各紙) | 一般社団法人環境金融研究機構


同会合の共同声明は、最終的にアンモニア発電について「使用を検討している国があることにも留意する」との表現で落ち着いた。議長国の日本に配慮したのだろうが、先進国でアンモニア発電を進めるのは日本だけだ。技術的、コスト的に課題が待ち構えている。


アンモニアの化学式はNH3で、中学理科で習う。水に溶かした「アンモニア水」の独特の刺激臭とともに覚えのある人は多いだろう。


アンモニアには炭素(C)が含まれていないので、燃やしてもCO2は出ない。ただし、アンモニアの製造に必要な水素(H2)をつくるため、石炭(C)やメタンガス(CH4
)を使う。このときに、燃やすのと同程度のCO2が発生してしまう。
(窒素N2は空気中に含まれるのでつくる必要はない)


CO2フリーの水素(グリーン水素と呼ばれる)は、太陽光発電や風力発電でつくった電気で水を電気分解して作る方法がある。電気分解の効率は70%程度(30%はロスとなる)なので、再生エネルギーが10%あまりしかない日本の場合、そのまま電気として使った方が全体としてCO2抑制になる。


政府・経済産業省もその点を考慮して、「グリーン水素ならぬ「ブルー水素」を使ったアンモニアを輸入して、発電に使うことを計画している。ブルー水素は、石炭、メタンガスなどの化石エネルギーから水素をつくる際に、発生するCO2を地中に注入するなどして封じ込める。いわゆるCCS(二酸化炭素の回収貯留)技術を使う。


ただ、CCSについては、コストをアンモニア価格に上乗せした場合、経済的にペイするかどうかが壁になるとの指摘がある。アンモニアは燃えにくく、燃焼効率は下がる。有害な窒素酸化物(NOX)の発生量も増えるため、この処理もコスト高要因になる。


経産省・資源エネルギー庁の試算によると、アンモニアだけで発電した場合のコストはキロワット時あたり23.5円(2018年時点試算)で、LNG火力の10.7円(同)に比べて2倍以上となっている。


政府・経産省は、2030年までに、アンモニア発電をメタンガスが主成分のLNG火力並みの価格に引き下げる目標を掲げている。アンモニアの新しい製造法=化石燃料を使わないを生み出さない限り、無理があるようにみえる。いまのアンモニア製造はメタンガスを使うのが主流になっているからだ。


+++++++


アンモニアの作り方は高校化学の範囲になる。発明者(ノーベル賞受賞)の名前をとってハーバー・ボッシュ法と呼ばれ、水素(H2)と窒素(N2)を高温高圧の条件で、鉄を主体とした触媒を使って反応させる。
3 H2 + N2  ⇌ 2 NH3


N2は空気中にあるが、水素をつくるのにメタン(CH4)や石炭(C)が使われる。その際にどうしてもCO2が発生する。アンモニアの製造工程で使われる熱源によってはCO2排出量がさらに増える場合もある。
C + 2・H2O → 2・H2+CO2
(石炭から水素ガスをつくるときの化学式、実際はほかの複雑な反応も起きる)


ハーバー・ボッシュ法に変わる、新しいアンモニア製造法は間違いなくノーベル賞級の発明
になるだろう。


CCS技術について、多くの環境団体は自然への影響が解明されていないこと、大気中への漏出の可能性があることから、反対を表明している。

×

非ログインユーザーとして返信する