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24年前の円買い介入との違いは 米は「強いドル」変更し協調介入 日本は「金融不安」のさなかだった

(日本銀行本店 上からみると「円」にみえる)


政府・日本銀行は22日、為替の円安に歯止めをかけるため、24年ぶりに円買い(ドル売り)介入をした。24年前というと1998年(介入は6月)だが、そのころの日本の経済情勢を振り返りつつ、為替介入で円安を止められるかどうかを考えてみたい。


1998年当時に円安となった要因のひとつは、日本の金融不安である。前年の1997年11月、巨額の損失を抱えきれなくなった四大証券(死語である)の一角をなす山一証券と、バブルに乗った無謀な投融資が焦げ付いた北海道拓殖銀行が相次いで経営破綻した。


某大手信託銀行には貯蓄商品(貸付信託)の解約を求めて大勢の人が押しかけ、一種の取り付け騒ぎまで起きた。(銀行の前に行列ができると騒ぎが大きくなるので、銀行内の講堂や会議室にまで顧客を入れた。店舗内は重苦しい、異様な空気に包まれた。)


もうひとつ当時のドル高(円安)の要因をあげると、クリントン大統領の時代、ウォール街出身のルービン財務長官が「強いドル」政策を主導していたことがある。(経常収支が赤字を続けている米国は「強いドル」をいわないと、カネが集まらないからと揶揄する向きもあった。巨大投資銀行が製造業を上回る利益をあげ、かつ世界からカネを集めて巨大IT企業が次々に生まれた現在、あながち間違いといえない。超富裕層と持たざる層の2極分解をまねきそれが米国の「不安定」を生んでいるのはご承知の通り。)


話は前後するが、ルービン氏のドル高政策は1997年7月、タイの通貨バーツの大幅下落をきっかけに、インドネシア、マレーシア、韓国など、当時のアジア新興国通貨が軒並み暴落する「アジア通貨危機」を招くことになった。


米系ヘッジファンドが、ドルにほぼ連動していた各国の通貨が割高になっているとみて、大きな空売りを仕掛けたのである。(タイを例にとるとバーツがドルに連れ高したため、輸出がふるわず、経常赤字を出していた。)


当時の「円安」は、アジア通貨危機の大波が金融不安を抱える日本に波及した面がある。


今回の介入は日本単独で行われたが、98年6月の円買いドル売り介入は日米の協調介入だったことは言っておく必要がある。(それ以前に単独介入をしたが効果はみられなかった)ルービン氏が「ドル高」修正に動いたわけだが、なぜ心変わりしたのだろうか。


金融アナリストの久保田博幸氏は下記ウエブで、アジア通貨危機によって、米国経済にもマイナスの影響(株式下落や輸出不振)が出ており、危機を収束するため、協調介入によって「ドル高」の修正をはかった、との見解を示されている。


1998年6月にドル円が140円台を付けた際、ドル売り円買いの日米協調介入が実施されたのは何故か(久保田博幸) - 個人 - Yahoo!ニュース


いまの経済状況と大きく異なるのは、金融不安のさなかにあっても、日本の製造業はおおむね堅調で、98年には1990年代で最大となる13兆9900億円の貿易黒字を出している。一方、米国の貿易赤字は98年に2,298億ドルと史上最大額を記録している。


貿易収支をみる限り、当時のドル高は行き過ぎていたといえる。円安が日本の輸出産業に有利だったことも否めない。日米貿易摩擦はひところ(日米自動車摩擦)より収まっていたが、米製造業には輸出に不利に働くドル高政策への不満が高まっていた。


ひるがえって、最近の日本の貿易収支をみると、今年8月まで13ヶ月連続の赤字である。いまの円安は日米金利差だけでなく、貿易収支の面からみても、それなりの理由があるといえる。


円安による輸出のプラス面が出てこないのは、スマホ登場で姿を消した携帯電話のように日本メーカーの競争力喪失や、生産そのものが海外に移転した影響があるだろう。


現在、米FRBはインフレ抑制のため23年までは政策金利を引きあげると明確に示している。黒田日銀総裁は当面、金融緩和を続けると繰り返し述べている。
方向性はほぼ真逆で、今後、米国が利上げをするたびに、一段の円安が進むかもしれない。政府・日銀は(単独)介入でときどき「投機筋」を痛めつけて、円安の速度をゆるめるぐらいしかできないと思われる。


もっとも、円買い(ドル売り)介入で円が高くなったときは、投機筋には絶好の円の売り時かもしれない。


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1998年6月の協調介入で一時ドル安にふれたものの、8月には1ドル=147円までドルが上がった。それが一転してドル安になったのは、ロシアのデフォルトが引き金となって、米国大手ヘッジファンドが破綻したことが大きい。金融当局の介入の結果ではない。10月には1週間たらずで30円ものドル急落を演じた。このヘッジファンドは、ロシアルーブル債を組み込んだ取引で巨額の損失を出し、その損を埋めるためにドル資産を売らざるをえなくなった。それが、多くの機関投資家を巻き込んだ連鎖的なドル売り=ドル急落につながったといわれる。

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