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黒田・日銀 「ヘッジファンド」に完敗 総裁は 「金利裁定」がわかっていない?

黒田東彦日銀総裁
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海外の運用会社が今年6月ごろから、日銀が超金融緩和政策の修正すると見込んだ、日本国債先物の「売り」(ショート)を組み込んだ運用戦略をとっていることを公言していた。


10月に政府・日銀が為替市場に円買いドル売り介入したことにより、為替は大きく円高ドル安に振れた。アベノミクスを後押ししていた著名な大学教授(財務相OB)は、ヘッジファンドは負けたとネット上で言っていたが、はしなくも馬脚を現した。


海外投資家が目をつけているのは、日米金利差だけでなく上場されている10年もの国債先物の設定金利6%と日銀が「防衛ライン」にしていた長期金利の上限「0.25%」の差なのである。(後述します)


日銀が10月に5兆円もの為替介入を行い円高ドル安に海外機関投資家が損失をこうむったとの見方も出ていたが、ブルームバーグ通信は、海外投資運用会社のUBSアセット・マネジメントやシュローダー、ブルーベイ・アセット・マネジメントは、大きな利益をあげたと伝えている。
運用会社のマナジャーは「クリスマスプレゼントになった」とも言っている。
ブルーベイやUBSアセット、勝ち組に-日銀が予想外の政策調整 - Bloomberg
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こから先の話は、ごくごく単純化しています。


前提として、発行時に金利(クーポン)が決まっている国債は、それより高い金利で新規に国債を発行すると、前の国債(既発債)は価格が下がる、ということがあります。顧客が金利の高い新発債を買うため、既発債はそれより低い価格にしないと、客に売れないからです。ここで、国債先物を空売りしている投資家が安くなったところで買い戻すと、差益がでます。これが、価格裁定です。


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22年度の国債発行額は215兆円だから、3ヶ月では70兆円となる。国債を新規に発行した国債は証券会社、投資銀行、銀行がプライマリーディラーとして最初に購入する。引き受けた国債を3ヶ月以内にほかの銀行、証券、保険会社などの金融機関に売りきるとして、できるだけ高く売りたいと考えるのはふつうである。その時に使うのが10年物国債先物だ。国債先物が高い(金利=利回りが低い)ときに売っておくのだ)


先物の決済は3ヶ月ごとに来るが、そのときには現物国債と理論価格で出した「先物価格」は期限に向けて収束する。決済は先物の反対売買(買った側は決済価格で売る、売っていた側は買い戻す)で差金決済するか、現物国債の引き渡しを買った側に行う。


価格ヘッジという先物本来?の使い方をする銀行・証券など金融機関は、現物を最終的には「買い手」の日本銀行に引き渡すことで決済することになる。(日銀の買いオペに応じる)


なぜなら、日本銀行は無制限で上限金利2.5%という指し値で買うことを宣言しているからだ。(無制限指し値オペ)


金融機関が日銀に引き渡す現物銘柄は「チーペスト銘柄」といわれる。理論的に残存期間7年物の国債がもっとも割安なのだ。(引き渡し銘柄は残存期間7年物から11年物国債から「売る側」が選べるが、理論上チーペスト銘柄はもっとも償還までの期限の短いものになる。)


日銀は2012年末からの超低金利政策で金利(債券利回り)を低く抑えてきた。16年にはマイナス金利を導入した(「事実上の利上げ」前までは10年国債金利の上限を0.25%にクギつけした。)ためだ。


その結果生じたのが、金利カーブのゆがみだ。日銀が買いすぎて市場にある(金融機関が保有する)チーペスト銘柄が枯渇し、チーペストが「最安」でなく割高になってしまったのだ。


(再度指摘しておくと、黒田総裁は金利カーブのゆがみが自然発生的に起きたようにいっているが、黒田総裁がすすめた「超金融緩和」が生みだしたものだ。原因をつくりだしたのは黒田・日銀なのに「ごまかし」と言うほかはない。)


話を戻すとチーペスト銘柄が割高になったのは、日銀にとっても、新発債を引き受けるプライマリーディーラー(および国債を保有するその他金融機関)にとっても困ったことである。


チーペスト銘柄を日銀に買ってもらっても、プラスが出るどころかマイナスになるからだ。そんな状況で、だれが金利0.25%の新発国債を引き受けるだろうか。プライマリーディーラーを下りるところが出かねない。日銀が上限「0.25%」を固守している限り、新発債を引き受ければ損が膨らむからだ。


朝日新聞の12月27日付け記事(東京7面)によると、2016年1月に日銀は短期金利をマイナス0.1とする「超金融緩和」の強化策をとったが、このときは賛成5、反対4という決定だった。
さらに、同年9月にはいまにつづく、長期金利を操作する市場操作に踏み込んだ。


異形の金融政策 転機はマイナス金利 日銀苦しめた「2%」の重圧:朝日新聞デジタル
もしかするとだが、賛成した黒田総裁を含めた5人の審議委員は、「価格裁定取引」はわかっているが、「金利裁定取引」までは理解が及んでいないのではないか。


「先物」の売り買いは、見方を変えると「金利」を売り買いしているのだ。金利が先物の決済期限の3ヶ月後には上がる(現物価格は下がる)とみれば、先物を売っておけばよく、逆に金利が下がるとみれば、先物を買っておけばいい。


安倍晋三元首相は生前、日銀は政府の子会社で、国債をいくら増発しても借り換えしていけば、何の問題はない」と話していた。


安倍晋三氏が「金利裁定取引」を理解していなかったのは、ありうることだが、黒田東彦総裁はどうだろうか。東大法学部卒で大蔵財務官まで務めた、大蔵官僚エリートであるが・・・「価格裁定取引」まではわかっていても、「金利カーブのゆがみ」で利益を出す「金利裁定取引」まで理解していないと思われる。


今回の政策決定会合は、「長期金利は0%を目標し、上下0.5%の(つまりマイナス金利)幅に誘導する」ということで、マイナス幅を大きくしていることだ。


「株価」にマイナスの株価はなく、国債の「金利」にマイナスの金利がないという「基本」がわかっていないのだ。(国債利回りにはマイナスがありうるからややこしいが)


マイナスの金利を日銀におさめるのは、税金を払うのと同じ事である。だれが税金を払うために国債を買うだろうか。


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蛇足、国債先物を使ってもうける方法


日銀が長期金利上限を0.25%から0.5%に上げた20日、長期国債先物は148円から145円に下げた。今年11月には150円程度で取引されていた。150円のとき150億円売り立てていた投資家は、145億円で買い戻せば、5億円の差益が出る。


一方で、150億円分の短期金利の国債(利回りはマイナスでも可)現物を買って保有していた場合、金利の変動はほぼ受けることはない。マイナスでも償還されれば、150億円が確実に手にはいる。こうすれば、為替リスク関係なしに確実に利益をあげられる。買っておいた国債現物は、先物を売り立てるのに必要な証拠金(現金)を借り入れる担保にする。


話せば長くなるが、確実にもうけられるのは、国債先物が額面100円、金利(クーポン)6%という現実にはない国債を「原資産」としているため、金利の変動が増幅されて、理論的に出される先物価格に反映するためだ。

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