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新総裁・植田氏のいう「不測の事態とは何か」 国会で「正常化」に魔法なしと答弁

YOU TUBE ANNnewsより、衆院委員会で質疑に答える植田和男氏。
植田和男・次期日銀総裁候補が所信聴取(2023/2/24) ANN/テレ朝 - YouTube


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日本銀行の黒田東彦総裁の後任にほぼ確定した、元日銀審議委員で経済学者の植田和男氏に対する所信聴取と質疑が衆議院議院運営委員会で行われた。


黒田日銀の10年におよぶ「異次元緩和」の弊害のひとつは長期金利(10年物国債金利=利回り)を政策金利の誘導目標にしたことによる、金利カーブ(イールド・カーブ=YC)の歪みだ。国債の消化に困難をきたし、昨年12月には上限金利の引き上げに追い込まれた。


金利カーブの正常化について、植田氏は「長期金利目標の年限の短期化や、許容変動幅の再拡大」をオプション(選択肢)に上げる一方で、「現時点で具体的なオプションの是非を申し上げることは市場に不測の影響を及ぼすリスクがあり、控える」と述べた。


「不測の事態」とは穏やかではないが、その要因を考えてみた。


ひとつは、長期金利上限の「突然の」引き上げによる市場の混乱は避けたいということだろう。日銀は、昨年12月20日の金融政策決定会合で±0.25%から±0.5%としたが、市場は事実上の利上げと受け止め、為替はドル安円高に大きく触れた。


このとき、黒田東彦・日銀総裁は「利上げではなく、振れ幅の拡大だ。」と強弁した。黒田氏は、それまで、物価高に拍車をかける円安がすすんでも、粘り強く緩和を続けると言い続けていた。突然の修正だったこともあり、黒田氏の「市場と対話しない」姿勢が批判された。


(黒田氏のあげた理由は「金利カーブの歪みを修正するため」だったが、その歪みを作り出したのは「異次元の緩和」だから理由になっていない。)


いまもある「問題」は、12月に長期金利の上限を上げたが、金利カーブのゆがみはいぜん正されていないことだ。残存期間10年の国債利回りは上限の0.5%に張り付いており、ほかの年限に比べて価格が相対的に「割高」になっている。


債券の「割高」を是正するには「金利」を上げることだが、植田氏は「緩和は維持する」と明言しており、売り圧力が高まっても、いまと同様に国債を買い支えるしか手はないようにみえる。


国債の売り圧力が弱まるのは、足もとで4%の物価上昇が政府・日銀が目標とする2%程度に落ち着くことが必要条件になる。


植田氏は国会質疑で、23年度の半ばにはインフレ率は1.8%程度になるとの見通しを示した。しかし、それに対応する長期金利を市場が「0.5%」とみるかどうかは別問題である。(市場の金利発見機能の喪失は異次元緩和の弊害であることは12月の決定会合でも指摘されている)


植田氏の答弁から推測すると、正常化に向けては長期金利の上限引き上げのほかに、政策金利を年限のより短い国債金利に変えることが考えられる。現在、マイナス0.1%の短期金利を0プラスにすることも視野にあるかもしれない。


ただ、そのときは、「野放し」になった長期金利が急上昇する「不測の事態」を招くかも知れない。


植田氏は「私の使命は、魔法のような金融政策を行なうことではない。物価目標2%のミッションを達成し、金融政策の正常化に踏み出すことだ。」と述べた。国際的な学者の植田氏をして、「魔法はない」というところに正常化の難しさがうかがえる。

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