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北陸電・志賀原発 地震動で受電用主変圧器が使用不能に 停止中と運転中の「安全」は異なる 耐震性再検証は不可欠

上は北陸電力の広報資料の添付図、外部の発電所から受電するための3つの変圧器が故障している。放圧板動作とある、1号機主変圧器、1号機所内変圧器も使用できないとみられる。
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北陸電力は、運転休止中の北陸電力志賀原発が、1日に起きた能登半島地震により1号機(54万キロワット)と2号機(135万キロワット)で、外部電源を受けるための3つの変圧器が故障した、と発表した。外部電源が途絶えた時に使う、高圧電源車の使用する場所に数センチから数十センチの陥没が生じた。


故障したのは1号機起動変圧器、2号機主変圧器、2号機励磁電源変圧器の3台。1、2号機とも予備の電源変圧器は正常に機能しており、使用済み核燃料プールの冷却などには影響は出ていない。(高圧電源車を使う場合には延長ケーブルを使うと言っている)


以下は、北陸電力が、原発停止中の「安全性」と運転中の「安全性」はまったく異なるとの認識があることを前提にしている。


北陸電力は「(原発に)安全上の大きな問題はないことを確認した」といっている。しかし、運転中ならどうだったか。


原発運転中に必要な電力(内部消費電力)は発電力の2%程度と言われている。原子炉冷却に必要な電力は、停止中に消費する電力(プールの冷却、水循環など)に比べると格段に大きい。


運転中に、内部、外部の電源を失えば、核分裂が続いている原子炉を冷却するためのポンプ、モーターを動かすことができなくなる。原子炉内の温度は上がり続け、冷却水を失い、最悪の場合はーー福島第1原発で起きたようにーー炉内の燃料棒が溶融するメルトダウンに至ってしまう。


北陸電力によると、1号機の下で震度6弱を計測した。地震発生は1月1日16時10分。1号機の使用済み燃料プールでポンプが一時停止したが、1日午後4時39分に再起動した。予備電源に切り替わるまで29分間は外部電源を失ったとみられる。


志賀原発の所長以下の職員は、原発停止中ではあったものの、「外部電源喪失」がアタマをよぎったのではないか。


変圧器の損傷は、内部の絶縁・冷却用の油が地震の揺れのためパイプの継ぎ目などが破損し外部に漏出したとみられる。コンクリートの防潮堤も一部に沈下が生じた。地割れが生じたことを考えれば、地表の揺れはかなり大きかったと思われる。


志賀原発が運転中であれば、「安全」を確保できたかどうかは、地元の人はもちろん、原発事故に敏感になった国民の関心事だ。北陸電力が原発再稼働を考えている以上、必須事項でもある。


震度6弱で主要変圧器が使えなくなるのは「想定範囲」なのかどうか。原発で使う変圧器の耐震性、高圧電源車の接続場所の耐震性などの再検証が必要だろう。


さらにいえば、原発運転中に外部電源を喪失した場合、どのようにして、「冷温停止」にもっていくか、北陸電力の自発的なシュミレーション、再点検が必要だ。「ればたら」だと切り捨ててはいけない。


以上、重ねていうが、停止中の安全性と運転中の安全性がまったく異なることを北陸電力が認識していることを前提にした。


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北陸電力の資料図によると、故障したのは1号機起動変圧器、2号機主変圧器、2号機励磁電源変圧器とDG2C変圧器の4機。(DG2Cは外部からの受電には関係がない)


(変圧器内から漏出した油=絶縁、冷却用=の量について、北陸電力は最初の発表を上方修正した。これをもって、北電が故障を過小評価していたと書く新聞記事があるが、筆者からいえば、油の漏れる量の多少を問わず、変圧器が使えなくなったことが大きい。)


北陸電力は、故障した4つの変圧器以外でも、1号機主変圧器と1号機所内変圧器が内部の圧力が高まって、圧力を外に逃す放圧板が動作した(飛んだ)ことを公表している。筆者はこの2台の変圧器も使用不能になったと考えている。(ふつう安全弁が飛んだ機器は何であれ危なくて使えないだろう。オイル漏れを放置して車の運転を続けたらどうなるか、考えてみたらわかる。)


先に書いたが、1号機の冷却プールのモーターが止まったのは1号機の変圧器が使用不能になったためだろう。


放圧板が飛んだとき大きな爆発音がしたため、所員が手動で消火装置を作動させた。北陸電力から連絡を受けた政府は1日に、志賀原発の変圧器で火災が発生したと発表した。


北陸電力の資料によると、現在、外部から受電可能なのは、1号機予備電源変圧器と2号機予備電源変圧器の各1機と思われる。


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2011年3月11日の東日本大震災の発生時、志賀原発は定期検査と機器の不具合で1,2号機とも運転を停止していた。その後、福島第一原発のメルトダウン事故を受けて、安全基準が見直されることになったため、運転休止が続いている。
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能登半島地震では、志賀原発にもっとも近い大型発電所、北陸電力・七尾大田石炭火力発電所の1号機(50万kW)と2号機(70万kW)が、地震後に緊急停止した。


筆者は、志賀原発1号機、2号機ともに主変圧器を使えず、予備電源変圧器を使う状況となった。加えて、大型の七尾太田火力発電が停止し、外部から受電できなくなる一歩、手前だったと考えている。(北陸電力富山火力発電所も出力を低下して稼働中で、関西電力から電力融通を受けている。)


東日本大震災では、福島第1、第2原発に近い東北電力原町火力発電所(石炭火力、1号機、2号機各100万キロワット)が大きな被害を受け、福島原発とつなぐ送電鉄塔も倒壊したため、福島原発は外部電源を失うことになった。


火力発電所や送電鉄塔、送電線の耐震強化も重要だと考えるが、立ち遅れているのではないか。

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