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コメを減らして小麦をつくっても食料自給率はあがらない 内外差益を補助金に回す仕組みに限界

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「有事」に備えて「食料自給率を向上させるべし」という議論が国会でされている。余剰気味のコメの転作作物として小麦を増産せよという声もある。


もっともらしい意見に聞こえるが、国産小麦は輸入小麦に比べて割高なため、国は小麦生産者(農家)に補助金を出して国内価格を抑えている。補助金の原資は輸入小麦からあがる差益で、むやみに国産小麦を増やすと、国民にツケが回ってくることを考える必要がある。


小麦は政府独占輸入品目に指定されており、政府が海外(米国、豪州、カナダ)から買い付け、国内の製粉会社に売り渡す仕組みになっている。


23年10月以降の政府売り渡し価格は国際市況の下落を反映して、23年4月期に比べると11.1%安い1トンあたり6万8240円と決まった。(上記3カ国産の6銘柄加重平均)


さて、ここで売り渡し価格決定の重要な要素が抜けているのに気づかれた方はいるだろうか。


そう、政府の買い付け価格はいったいいくらだったのかが不明なのだ。売り渡し価格は、政府の買い付け価格に運賃を乗せて、円ドルレートを加味し、最終的に農水省が「マークアップ」という上乗せ調整金を乗せたものとなる。(以前は差額関税といっていた。いまも実質的には「変動する」関税である。)


輸入小麦は480万トン、国産小麦は100万トンである。輸入小麦に課す「マークアップ」によって政府が得た差益は、おもに国内小麦農家に支払われる補助金にあてられる。


小麦の内外価格差は3~4倍あるとされる。生産費の高い国産小麦価格が、マークアップを上乗せした輸入小麦と同じ価格になるような仕組みにしている。(なおかつ、別途補助金を出して、小麦生産者がコメをつくるのと同じくらいの、所得が得られるようになっている。)


国内の小麦生産者は、米国や豪州に比べて規模が小さく、どうしても小麦の生産費が高くなってしまう。筆者は補助金じたいを否定するものではない。


北海道では一経営体当たり50haから100ha以上という小麦生産者がふつうにあるが、米国に目を向けると、家族経営でも5,000ha以上という小麦農家がある。


本州では小麦がもともとコメの裏作として始まった歴史があり、経営規模は北海道よりさらに小さくなる。


穀物は重量比のカロリーが高く、その自給率を上げることは大事なことではあるが、輸入差益を小麦生産者への補助金にあてて育成する仕組みはどこか無理がある。(自給率を上げるのは輸入が途絶するときの準備だろうが、輸入がなくなれば小麦農家への補助金も出せなくなる。)


平時であっても、むやみに小麦の国産化率を上げようとすると、より多額の補助金が必要となり、マークアップが引き上げられ、国内小麦価格が上がるということもありうる。それで消費者の理解が得られるだろうか。


冒頭で書いたことに戻り、コメをやめて小麦をつくるときの穀物自給から考えた得失を考えてみたい。


2022年の主食用コメの生産量は670万トンだった。作付面積は125万1,000ヘクタールだったので、10アールあたりの収量を計算すると536キロになる。


22年の作付面積は21年に比べて約4%、5万2,000ヘクタール減っている。仮にコメを作っていれば27万8,000トンの収穫があったはずだ。


さて国会議員の皆さんが言っているように、作付けを減らした水田に小麦をつくった場合、穀物自給は上がるだろうか。


日本の小麦の10アールあたりの収量は447キロ(2020年実績)だった。コメをやめた5万2,000ヘクタールすべてに小麦を生産すると、23万2,000トンを収穫できることになる。


その結果は、水田を小麦へ転作した結果、穀物自給量は4万6000トン分低下することになる。国産小麦の単位面積あたり収量をコメなみの500キロ以上にすることが必須となる。


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白米と小麦粉それぞれ100gのカロリーは約350kcal程度でほぼ同じである。もみを白米にする歩留まり、小麦を小麦粉にする歩留まりを考えなければならないが、これはコメの方が有利なようだ。6対5か7対6の間か?。


水を張って稲を育てる水田を、乾燥した環境が適する小麦畑に転換するのは簡単なことではない。排水のための大規模な工事=投資が必要となる。小麦は連作障害への対策も必要になる。

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