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H3ロケット打ち上げ「中止」 よみがえるH2「失敗」の悪夢

JAXAの公開資料より HⅡロケットとHⅢロケットの比較 一回り大きく、大型衛星も打ち上げ可能。費用はHⅡAの半額50億円程度を目ざしている。


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17日のH3ロケット初号機の打ち上げは、ブースター(補助)エンジンに点火せず、中止となった。その後の記者会見で共同通信の記者が、JAXA=宇宙航空研究開発機構の担当者(プロダクトマネジャー)に対して「一般的に失敗というのではないか」との質問をして、何かと批判を浴びている。(たとえば、記者個人の「失敗評価」を「一般化」するな等々)


JAXAはブースターエンジンに点火しなかった原因を究明して、3月10日までに再打ち上げを目ざすとしている。筆者は、再打ち上げの成功を願う1人だが、その一方、中止にいたった原因次第で、(3月10日を超えた)大幅な延期もありうると考えている。


今回、問題があったのは、「H3」初号機の1段目の推進装置とみられる。新開発のメインエンジン「LE-9」2機と、ブースター(補助)エンジン「SRB-3」2機で構成される。
H3ロケット|JAXA 宇宙輸送技術部門


「LE-9]は予定(プログラム)通り、発射の6.3秒前から燃焼を開始した。正常にエンジンや制御機器が働けば、発射0.4秒前に、制御機器からブースターエンジンに信号が送られ、「SRB-3」が点火して燃焼を開始する。


推進力を増したロケットは、白煙と轟音に包まれて、発射台を離れるはずだった。H2Aロケットなどでおなじみの光景である。


ところが、ロケットの1段目にある制御システムが、1段目下部の異常を検知してブースターエンジンを点火する信号を送らなかった。メインエンジンは停止して打ち上げは中止された。


問題は、1段目下部に起きた「異常」とは何かということ。大きな改修を必要とする「異常」であれば、3月10日までの再打ち上げは難しいのではないか。


新機構を採用したLE-9エンジンの開発は難航、初号機の打ち上げは当初2020年度の計画だったが、2度、延長されている。直近の問題は、液体燃料を高速で送り出すターボ・ポンプの振動だったが、解決に1年近くを要した。


今回と同様、メインエンジンの燃焼開始後に、ブースターエンジンの点火に到らず、打ち上げ中止となったのは、1994年8月のH2ロケット2号機以来のこと。このときは10日ほど後に再打ち上げを成功したが、メインエンジン・LE-7の不調はその後も発生した。


1999年11月のH2・8号機の打ち上げでは、4分後にメインエンジンLE-7が停止、ロケットは海に墜落してしまった。これをもって、H2ロケット計画は中止し、ロケット本体、エンジンとも大きく改良したH2Aロケットに移行することになった。(使われる予定のLE-7エンジンはどこかの〇〇科学館で展示されている。)


JAXA/三菱重工業には、LE-7エンジンの苦難の歴史は残っているはずだ。筆者は、JAXA/三菱重工業が3月10日までの再打ち上げを断念し、打ち上げ時期を再延長したとしても、驚かないだろう。


今回、メインエンジンが停止するまで6秒以上は燃焼している。ロケットエンジンは消耗品で、累計燃焼時間や着火、停止の回数に限りがある。ロケット本体と衛星は再利用できても、初号機のメインエンジンが使えないこともありうる。


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LE-7エンジンを改良したLE-7Aを搭載したH2Aロケットは、2001年(平成13)年8月に試験機1号機の打ち上げに成功した。それ以来、46回中45回の打ち上げに成功している。(6号機は失敗)


いうまでもないことだが、H2Aロケットの成功が、本体、メインエンジンを一新した、H3ロケットの成功を約束するものではない。1機ずつ成果を積み重ねていくしかない。


最初の1機を失敗すれば、あと残り45機をすべて成功させないと、H2Aに追いつかない。最初の1機は、不安があればエンジンを換えてでも成功させるだろう。


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ブースターロケットの燃料は固体である。点火したら止めることはできない。初号機のブースターに点火されていたら、ロケットは打ち上げられることになるが、メインエンジンが不調だった場合、地上からの指令で、空中で爆破された可能性がある。


共同通信の記者は「フェイルセイフ」を知らないと批判する向きもある。そういう人は、「フェイルセイフ」が、なぜ働いたのかを考える必要がある。打ち上げは「本番」であって、「フェイルセイフ」システムをテストする場ではない。


共同ニュースについていえば、打ち上がらなかったロケットを、打ち上げ失敗というのは、ことばの使い方としておかしい。共同は、初号機が再打ち上げに成功したときどう報じるのだろう。失敗のときは再失敗だろうか。

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