時代遅れの新聞読みブログ

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中国原発 トリチウム多量排出 朝日新聞には「不都合な真実」か 他紙は放出前に記事化

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朝日新聞は4日付け朝刊「始まった処理水放出」で、福島第一原子力発電所の「処理水」に関連して、中国、韓国を含む海外の原子力発電所(施設)が、放射性物質トリチウムを海洋放出していることを報じた。(ただし、トリチウムの排出量の比較はしていない。)


この「事実」を最初に報じたのは6月23日付け読売新聞朝刊で、元になる資料は経済産業省が海外向けに英語でつくったものだ。読売新聞は経産省の資料をもとに、中国の複数の原発は福島第一処理水の6.5倍のトリチウム(年間)を海に放出していると書いている。


中国の複数原発がトリチウム放出、福島「処理水」の最大6・5倍…周辺国に説明なしか : 読売新聞


その後、産経新聞、毎日新聞もほぼ読売新聞と同内容の記事を掲載している。(当ブログでは8月24日に経産省資料を添付して、中国が「放射能汚染」を理由に水産物の全面輸入禁止措置をとることに根拠がないことを書いた。)

元の経済産業省資料
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全国紙では朝日新聞だけがこの「事実」を処理水の海洋放水前に記事化しなかった。なぜか。筆者が推測するところ、「処理水」放出に、反対または批判的な朝日新聞記者、論説委員(多数派と思われる)にとって、中国政府(韓国の野党)は立場を同じくする「味方」であって、中国がより多量のトリチウムを排出していることは「不都合な真実」だったからだ。


(処理水放出の旗をふる経済産業省のつくった資料は、信用できないと考えたのかもしれない。または、放出後の検査を待っていたという言い訳はできる。)


中国では、2021年4月に福島の放出計画が公表されたころから、SNSなどで福島第一原発が原子炉から出る「汚染水」を直接、海に排出するという事実と異なるイメージ図、映像が出回っている。


上のイメージ図は日本語版も流布している。壊れた原子炉から各汚染水が流れ出て、汚染水が流出する。
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中国では、2021年4月に放出計画が公表された前後から、SNSなどで福島第一原発が原子炉から出る「汚染水」を直接、海に排出するという事実と異なるイメージ図、映像が出回っている。


中国政府は、政府に都合の悪い情報はSNSからアカウントごと消去することがあるが、処理水放出については誤ったイメージ図、映像は、今に至るも野放しだ。


朝日新聞は29日社説、「中国と処理水 冷静な対話こそ必要だ」の中で、「処理水の海洋放出に中国の市民が懸念を抱くことは理解できる。」と書いている。間違った情報が中国国内で拡散していることを知った上で、この社説を書いたとしたら、おそろしいことだ。


論説委員が知らなかったとしても、朝日新聞の中国担当記者は当然、中国の状況を知っていると思われる。ところが、林望中国総局長は署名記事で、「日本では中国相手に商売していた水産業者が途方に暮れ、中国では不安がる子どもに何と説明していいか分からないと嘆く母親がいる。」と情緒的に書いている。


中国国内で事実と違う情報が流布した結果、国内で汚染水不安が膨れ上がったという側面を無視していると言わざるをえない。(各地で起きた塩の買い占めなどその一例だ)


4日の朝日新聞記事に戻ると、先述した海外の原子力施設のトリチウム排出量のほか、①多様な放射性物質が含まれる「汚染水」はALPS=多核種除去設備=でトリチウム以外の核種を除去した後、海水で希釈し、


②ALPSで取り除けないトリチウム濃度を放出基準の40分の1以下にして放出する。
③トリチウムなど放射性物質の測定は政府、東京電力、福島県がそれぞれ行い、食い違いがないかチェックする、ことも書いている。


「処理水」の安全性がどう担保されているかが中心で、海外の原発がトリチウム汚染水を出しているという項目はサブの扱いである。


この記事の筆者は科学医療部の福地慶太郎記者でいまは福島で取材しているようだ。一読者として、この記事は「処理水放出」前に掲載するべきだったと考える。聞く耳を持たない中国はともかく、国内の風評被害の抑制にはプラスだったと思われる。

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