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岸田首相のナゾ説明 「社会保障にかかる国民負担率」は存在しない

YOU TUBE TBS NEWS DIG 【少子化対策】支援金制度めぐり総理「社会保障にかかる国民負担率は上昇しない」と強調|TBS NEWS DIG - YouTube
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いわゆる「異次元の少子化対策」の財源について、岸田文雄首相は28日の参院予算委員会で「実質的な追加負担は生じさせない」というこれまでの説明を、「社会保障負担にかかる国民負担率は上昇しない」との表現に言い換えた。


野党は、少子化対策の財源をより具体的に示すよう求めていた。岸田首相の持ち出した国民負担率はマクロ経済の用語で、負担率が上昇しないと言ったところで、追加的な負担がないことを意味しない。


国民負担率は、分母をGDP(国内総生産)、分子は「国、地方自治体の税金(租税)の総額」 プラス 「社会保障負担(いわゆる社会保険料)の総額」として算出する。


ここでいう「国民」は、ヒトの国民だけでなく、企業など法人、税金を払っている事業所が入る。(GDPは22年度でざっと560兆円。額は財務省資料)


2022年度の国民負担率は、財務省の公表資料によると、47.4%だった。内訳は税負担率が28.6%、社会保障負担率が18.8%である。
令和5年度の国民負担率を公表します : 財務省


さて、岸田首相の説明にもどると、「社会保障負担にかかる」国民負担率が何を意味するかがわからない。社会保険は保険料がほぼ全額、給付や、年金基金の管理・事務に使われるとして、社会保障負担にかかる社会保障負担率は18.8%として問題はない。
(くどい書き方だが、首相が持って回った言い方をしているのが悪い。韜晦戦術であろう。)


問題は、「社会保障負担にかかる」税負担の方である。社会保障の大どころは年金(国民、厚生年金)、健康保険だが、それぞれの保険料収入だけでは給付をまかなえず、一般会計から、厚生年金と国民健康保険にそれぞれ10数兆円のカネが支出されている。(2022年度)


一般会計からの給付が、すべて税金由来であれば、「社会保障にかかる税負担率」を推計できるが、税金だけでは歳出がまかなえず、国債を発行しているのは国民みなの知るところ。おカネにいろがついていないのと同様、一般国債には色がついていないので、社会保障の正味(?)税負担は算出不能なのである。


(ちなみに、国の一般会計のうち、社会保障支出は36兆8000億円にのぼる。税収(印紙収入を含む)69兆4000億円のほぼ半分近い。このうちどのくらいが税負担によるかは、ますます計算し難い。)


さて、この質疑を伝えた報道には、首相の答弁について「賃上げで個人の収入が増えると、それにスライドする社会保険料(税)が増えるので、子育て支援に回す余裕が生じる。」という「善意的な解釈」もあった。


そういう趣旨なら、なにも国民負担率というマクロ経済指標を持ち出すまでもなく、各保険の特別会計の中でのやりくりですむことだ。(いまも厚生年金保険料には子育て支援の拠出分が上乗せされている。たぶん、これを引き上げるのだろう。)


なぜナゾ説明をしたかだが。質問者の知らない(?)と思われるマクロ経済指標を持ち出して、けむにまこうとしたのだろう。社会保障負担にかかる税負担率がないことは岸田氏本人が知っていたかどうかは不明だが、岸田氏に知恵をつけた側近のだれかは知っていたはずだ。


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蛇足で、もうひとつ指摘しておく。岸田首相は賃上げに力点を置くが、賃上げをするときは企業業績もよく、分母のGDPも増えているだろうことだ。(どちらが先かはニワトリとタマゴの関係に近い)
分母のGDPの伸びほどに社会保険料収入が上がらないと、社会保障負担率は下がる。負担率が下がることが一概にいいとは限らない。
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この答弁を伝えた朝日新聞29日電子版は、国民負担率について、「個人や企業などの収入をあわせた国民所得を分母、税や社会保障の負担を分子として計算した割合。」と説明している。分子は正しいが、個人や企業などの「収入」をあわせた「国民所得」というのは誤り。
個人は受け取った賃金がほぼ付加価値といっていいだろうが、企業の場合は仕入れや人件費、設備の償却費などを差し引いた「もうけ=利益」がその企業の生んだ付加価値となる。
もう少し勉強した方がよい。経済部の記者ではないようだが、

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