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「円安はプラス」は黒田・前日銀総裁の見込み違い 日経「履歴書」に反省なし

黒田東彦前日本銀行総裁
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日経新聞に11月中、連載されていた黒田東彦・前日本銀行総裁の「私の履歴書」が終わった。総裁任期の終盤は駆け足に終わったきらいがあるが、筆者はこの2年ほどの間に、「異次元緩和」に固執した黒田総裁の「誤算」や「見込み違い」が露わになったと考えている。以下、過去に当ブログに書いたことを振り返りながら大蔵省的エリート官僚の誤算を指摘しておく。


黒田氏は2022年3月18日の金融政策決定会合後の記者会見で、「円安は全体として日本経済にプラスという構造は変わらない」と述べ、「強力な金融緩和(長短ゼロ金利)を続ける」姿勢を示した。


この時期、為替は1ドル118円台後半で推移していた。為替市場は、黒田発言に敬意を表して円売りドル買いに動き一時119円台にのせた。


黒田総裁は、この会見時、4月以降の消費者物価指数は2%程度の伸びとなる可能性があるが、原油などの輸入価格の上昇と、(前年4月の)携帯電話料金の値下げの効果がはく落することによるもので、目標とする2%の継続的な物価上昇にはならない、という認識を示した。


確かにエネルギーや穀物の国際価格(ドル建て)価格は高止まりして、その値上がり効果はおおむね一巡した。しかし、インフレに対応して政策金利を上げる米国と、長短ゼロ金利政策を続ける日本との金利差は広がる一方で、為替の円安が進んだのは紛れもない事実だ。
昨年10月には一時1ドル=150円台になった。


ドル建ての価格は高止まりのまま、そこに為替円安による押上効果が加わる。
日本ではエネルギー資源や、金属資源、穀物・食料を輸入に頼っているため、その価格上昇はまず家計を圧迫することになる。(最終商品に価格転嫁しなければ、最終消費財をつくる企業収益を圧迫する)


黒田総裁の見込み違いは、円安になっても、期待していた輸出が黒田総裁が想定したほどは増えなかったことだ。貿易赤字は22年から過去最大規模の赤字をたびたび記録した。


半導体不足で自動車輸出が増えなかったなどの要因はあるが、根本的要因は日本の産業競争力が低下していることにある。一時は世界市場を席巻した携帯電話はスマホの移行期に、市場が蒸発し、日本メーカーはスマホ市場から脱落した。


日銀のつくりだした、低金利は競争力を失いつつある企業の延命、コロナで打撃を受けたサービス業にはプラスだったかもしれないが、全体的な製造業の競争力を上げることはできなかったのだ。


黒田総裁は最後まで「賃金と物価の好循環」を呪文のように唱えていたが、超低金利を続けて10年たっても好循環が実現しなかったことを少しは反省するべきだろう。
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今日、12月4日は米国の長期金利低下観測から1ドル=146円台となっている。直近、11月末は150円程度だった。為替相場を動かすのは米国FRBと米市場の動きで、日本の市場はそれに追随するだけだ。

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