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三菱ジェット撤退前 カナダ・ライバル社事業買収のなぞ 訴訟解決のためか? 発表時は「SJ」整備拠点だったが

(YOU TUBE 時事通信トレンドニュースより、初飛行するMRJ 
MRJが初飛行=半世紀ぶり国産旅客機 - YouTube
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国産ジェット旅客機、スペースジェット(SJ、旧称MRJ=ミツビシ・リージョナル・ジェット)開発を進めていた、三菱重工業(製造子会社は三菱飛行機)は2020年6月、カナダ・ボンバルディア社の小型ジェット旅客機「CRJ(カナディア・リージョナル・ジェット)」事業(製造事業はのぞく)を買収した。


発表時には、CRJの持つ飛行機整備施設を、SJ実用化後の整備拠点にすることを掲げていたが、その一方で、SJの開発体制は大幅に縮小され、10月には泉澤清次・三菱重工業社長が「(開発は)いったん立ち止まる」と「開発凍結」宣言をした。進むのか退くのかわからない状況となったが、断念と決まったいま、その謎解きをしてみた。


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(個人的にはSJの実用化を願っており、三菱重工業の撤退は残念に思っている。ただ、上場企業である三菱重工業の情報開示が、子会社の三菱飛行機ともどもあまりにも不十分で、とりわけボンバルディアの事業買収についての説明は、投資家に誤断を与えるものと考えている。あえて一文を書く次第である。)
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ボンバルディアは「CRJ」の名が示すように、近中距離の小型ジェット旅客機の先駆者で、この分野で首位のブラジル・エンブラエル社とともに、SJにとっては潜在的なライバルといえる。


ボンバルディア社が、米連邦航空局(FAA)の「型式認証」の取得に手こずる三菱重をライバルとみていたかどうかは不明だが、CRJ事業の売却(三菱重にとっては買収)に先だつ、2018年10月、ボンバルディアは、三菱航空機とシアトルにある協力メーカーの米エアロテックを相手取って、ボ社の型式認証に関する機密情報を不正利用しているとして、米シアトル連邦地裁に訴訟を提起している。


MRJ、新たな難題 ライバル「企業秘密を盗用」と提訴:朝日新聞デジタル


訴状によると、「(三菱飛行機など)はボンバルディアの小型機「Cシリーズ」の開発に携わった複数の従業員を採用し、旅客機の認証に関するボ社の機密情報を得た」としている。


ボンバルディアの元社員多数がSJ開発に従事していたのは事実で、訴訟のあったころは、開発を統括するゼネラルマネジャーに、ボンバルディアでCRJ開発に携わったアレクサンダーミラー氏が就いていた。


これに対し、三菱航空機の子会社、米国三菱航空機は2020年1月に、ボンバルディアに対して「不正に情報を取得した事実はない。ボンバルディアはMRJの開発や型式証明取得について阻害し、市場投入を遅らせる意図で訴訟を起こした。」と反対訴訟を起こした。


この訴訟は同年6月、三菱重工業がボ社のCRJ事業の買収という形で終わる。買収額は5億5,000万ドル、さらに、約2億ドルの債務つまり借金も継承する。(7億5000万ドルは1ドル130円で換算すると975億円となる。)


三菱重工業はカナダに100%子会社「MHI RJ」を立ち上げ、CRJシリーズに関する、保守、サポート、販売、型式証明を継承したが、ボ社がこれまでに製造、販売した旧機種が対象。SJ開発が挫折したいまとなっては、事業の先細りは免れず、高値つかみの感はまぬがれない。


(付け加えると、Cシリーズの新鋭機はボンバルディアの提携先の欧州・エアバス社が「エアバスA220」として世界中に売り込んでいるところだ。昨年5月には羽田空港に飛来し、公開されている。)


日本初お目見えエアバス A220-300の機内と外観。丘珠・屋久島・利尻の短い滑走路にも就航可 - トラベル WatchC


さて、三菱重工が「立ち止まっている」ときに、CRJに加えて、将来はSJ整備の拠点にするとの目的を掲げて、ボンバルディア・CRJ事業の買収を決めたのはなぜか。


改めて、当時の記事をウエブで調べていると、買収が決まるのと引き替えに、ボンバルディア側は訴訟を取り下げていることがわかった。(見方を変えれば、買収の条件だったかもしれない)


ボンバルディアによる訴訟取り下げへ、事業買収完了時に=三菱重 | ロイター


推測の域は出ないが、①買収額は、ボンバルディアとのいわば「和解金」で、三菱重工は撤退を決めていたが、機密情報を不正に取得したという「汚名」を残したくなかった。
②ボンバルディアとの訴訟が現実に、型式認証取得の障害になっており、決着をつける必要があった。SJの整備拠点とすることを「本気」で考えていたが、結局は型式認証をとれなかった。


三菱重工業が真のねらいを明かすことはないと思われるので、あえて小文を書いた次第です。最後まで読んでいただいた方に謹んで謝意を表します。

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